Who's Who Canada−著名カナダ人を知ろう

新しいバッハを世界に贈った奇才
グレン・グールド



『ゴールドベルク変奏曲』のCDジャケット。
Courtesy of Sony Music Entertainment Canada



ART WORDS 広瀬 直子


今世紀最高のピアニストのひとりに数えられる、伝説の奇才・グレン・グールド。トロントで生まれ、育ち、活躍した彼の生涯は、死後も世界中の様々な文学、映画、番組に取り上げられ、議論を醸し出して止むことがありません。その音楽については、まずは自分の耳で聴いていただくとして、ここでは「奇人」とも言われたグールドの50年の生涯を垣間見てみましょう。

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グールドのCDが最近日本で大ヒットしたそうですが、これはタレントの木村拓也がドラマ番組でグールドについて言及したことが理由であるようです。

有名タレントに言及されずとも、グールドはカナダ人にとって伝説的なアーティストであり、彼の作品や活躍に関しては、その死後も熱意をもって語り続けられています。

1932年、トロントに生まれたグールドは、3歳のころから音楽的才能を見せ、弱冠14歳の時にオーケストラ演奏でプロデビューをしただけでなく、王立音楽院(Royal Conservatory of Music。当時の名はToronto Conservatory of Music)から最高学位を取得します。

そして、20代前半でリリースした初のアルバム、バッハの「ゴールドベルク変奏曲(Goldberg Variations)」は、「人類は新たなバッハを得た」、「バッハ演奏の神が生まれた」などと評されるほど世界の音楽界を震わせ、以降、グールドは20世紀のピアノ演奏の金字塔としてそびえ立ちます。

30代になって舞台公演をいっさい止め、アルバム制作のほか、カナダ国営放送局(CBC)での活動をはじめ放送作家として活躍するなど、技術を用いた表現媒体を選びました。著者としても活動します。舞台公演をやめた理由について彼自身は、こう語っています。「生演奏では自分がまるで寄席芸人みたいな気がして、貶められるように感じる」

グールドを巡る様々な作品が数え切れないほどあり、日本でも多くが販売されていますが、彼にあまりなじみのない方は、まずは1955年の「ゴールドベルク変奏曲(Goldberg Variations)」を聴きましょう(同曲の第2レコーディングを彼は死ぬ直前に行っています)。「Extasis」(エクスタシス)、「Glenn Gould - On the Record」「Glenn Gould - Off the Record」(2作品をあわせた邦題は「グレン・グールド27歳の記憶」)は、彼の音楽を聴いたことはあるが、人となりももっと知りたいという人にお勧めのドキュメンタリーです。「奇行」はグールドを描写するのにたびたび用いられる言葉ですが、これらのドキュメンタリーからは、なぜそう呼ばれるのかがわかってきます。父親由来の椅子にしか絶対に座らない。ピアノを演奏しながら身体を揺すり、左手で演奏している時には、右手を使って見えないオーケストラを指揮する。そして、演奏しながら大声で歌う―。

グールドは、50歳(1982年)で脳卒中のためトロントで急逝。彼の死後、枕もとにあったのは聖書と夏目漱石の「草枕」でした。


グレン・グールドゆかりの場所をトロントで辿ってみませんか?

王立音楽院(Royal Conservatory of Music)
グールドは7歳で入学。彼の在校時は、カレッジ・ストリートにありました。1952年まで在校。 現在の住所:180 Bloor St(ロイヤル・オンタリオ・ミュージアムの西横)

マウント・プレザント墓地(Mount Pleasant Cemetery)
グールドの眠る墓地。墓守に、グレン・グールドの墓はどこですか、と聞くと教えてくれます。日中は散歩にも適し、グールド以外にも、旧首相のマッケンジー・キングやインシュリンを発明したバンティング、ベストなど有名なカナダ人が数多く眠っています。 東西をBayviewとYonge、南北をMertonとMooreに囲まれた広大な墓地です。

マッシー・ホール (Massey Hall)
グールドがオーケストラ・デビューをしたホール。舞台公演をやめるまで、ここで何度もコンサートを行っています。ホールに入るにはツアーに参加するか、許可が必要です。 178 Victoria St.

ロイ・トムソン・ホール(Roy Thomson Hall)
晩年グールドが愛用したヤマハのコンサートグランド・ピアノが1階に展示されています。ホールに入るには許可が必要です。 King St. と Simcoe St. の角(University近く)

グールドの住んだアパート
アップタウンに静かにたたずむ質素なアパートです。彼は902号の住人でした。今も人の住むアパートで、住人以外、許可なしに中に入ることはできません。入り口に記念碑が立てられています。 110 St.Clair Ave.West

〔公式サイト〕
http://www.glenngould.com/gg/index.html(グレン・グールド公式サイト、英語)からは、クリップを聞くことができるほか、アルバムのオンラインショッピングや、各グレン・グールド関連サイトへのリンクがあります。


 
≪著者プロフィール≫
広瀬直子  
フリーランスの編集者・ライター・翻訳者。過去約6年間『とりりあむ』の編集を担当させていただいております。

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