
カタカナの弊害
「牛肉ミンチでハンバーグを作る」を英語で言うと?
ART WORDS 広瀬 直子
| 日本で普通に使っているカタカナ語を英語だと思い込み、使ってみたら通じなかったという経験はありませんか。英語らしく聞こえても、実は通じないカタカナ語は数え切れないほどありますが、このシリーズではテーマ別に日本人がカタカナに引きずられて犯しがちなミスを見ていきます。英語上級者でもちょっとした「カタカナミス」を犯すことはあります。あなたは大丈夫でしょうか?(ちなみに「ミス」というカタカナ語も英語人には通じません。) |
◇◇◇
以下の例は、日本人社員がランチを済ませてオフィスに戻り、カナダ人社員と話す場面です。
カナダ人:"What was your lunch?"
(今日のランチは何だった?)
日本人:"It was hamburg. It was really tasty."
(hamburgだよ、おいしかったな)
カナダ人:"Hamburg?" Was it some German food?"
(ハンブルグ?ドイツ料理か何か?)
日本人:"No, no, hamburg. With ground beef…"
(いや、だからhamburg。牛のひき肉の・・・)
カナダ人:"Oh, HAMBURGER!"
(ああ、hamburgerね!)
おわかりでしょうか。ひき肉を丸めてつくるハンバーグは、英語ではパンに挟まっていなくても「er」をつけてhamburgerと呼ぶのです。「Ground
beefsteak」、「minced beefsteak」などと呼ぶ人もいます。パンに挟まっているハンバーガーもhamburgerです。また、牛肉のひき肉そのものも、hamburgerと呼ばれます。Hamburgにはドイツの都市ハンブルグの意味しかありません。
次は、料理教室で講師が説明している場面です。以下に出てくるカタカナ語のうち、カナダで通じないものはいくつあるでしょうか?
| 「最初に、鶏肉のミンチに生卵1つとメリケン粉少々を入れて手で混ぜ合わせ、丸いボール型にととのえます。それを、オリーブオイルとレモン汁、コンソメスープを混ぜたものに10分ほどマリネしておきます。その間に、プチトマト10個をそれぞれ半分に切って、たまねぎは薄切にスライスします。プチトマトとたまねぎは、フライパンにバターを溶かし、コンロを中火にしてさっと焼きます。これに先ほどの鶏肉ミンチボールをあわせたものをアルミホイルに包み、ハーブをのせ、オーブンに入れて中火で20分焼きます。この料理には、ポテトフライやマッシュポテトなど、ポテト料理があいますよ。」 |
実際の英語に近いものは、以下の通りです:ボール、コンソメ、レモン、オリーブオイル、スライス、バター、ハーブ、オーブン(オリーブとオーブンの発音には気をつけましょう。それぞれ[アリヴ]、[アヴン]に近い音となります)。
ちなみに、「コンソメ(consomme)」は透明なスープを意味するフランス語で、英語でそのまま使われることもありますが、鶏肉のコンソメスープは「chicken
soup」、ビーフのコンソメスープは「beef soup」と呼ばれることの方が多くなります。「コンソメの素」は、材料が肉類であれば「meat
stock」で、「chicken stock」や「beef stock」は、スーパーでよく見かける商品です。
残りのカタカナ語はすべて、北米英語では違う言い方です。
● ミンチ→minced またはground meat (beef, chicken, porkなど)。
● メリケン粉→「flour」。この有名なカタカナ語「メリケン」は、「アメリカン」に由来すると言われます。
● マリネ→「marinade (下味をつけたもの)」
● プチトマト→「petit tomato」ときれいに発音すれば通じるはずですが、通常「cherry tomato」 と呼ばれます。
● フライパン→ご存知、「frying pan」ですね。
● コンロ→「stove」。カタカナで表記されることが多いので意外と知られていませんが、「コンロ」は日本語の「焜炉」です。カナダの家によくある調理用電気コンロは「electric
stove」、ガスコンロは「gas stove」。Stoveを「range」と呼ぶこともあります。日本でいう「電子レンジ」は「microwave(oven)」、暖房の意味で使うストーブは「stove」または「heater」。
● アルミホイル→「aluminum foil」 または「tin foil」
● ポテトフライ→「French fries」。「potato fries」または「fried potatoes」は正しい英語ですが、じゃがいもを揚げたり焼いたものが全て当てはまってしまい、細長く切ったじゃがいもを油で揚げたものだけを意味しません。イラク戦争にフランスが反対したことへの抵抗としてアメリカの一部で「French
fries」を「freedom fries」と改称したそうですが、「French fries」はフランスに由来する食べ物ではありません。また「French
fries」は、イギリスでは、有名な「fish and chips」のように、「chips」と呼ばれることが多いようです。
● マッシュポテト→「mashed potato」
マッシュポテトの例のように、日本語では単語の言いかえが行われていなくても、名詞の前において動詞から「〜された」という意味の形容詞を作る「ed」を抜かしてカタカナ化する傾向があります。「smoked
salmon」は「スモークサーモン」、「scrambled eggs」を「スクランブルエッグ」というように。「ed」抜きでも通じるでしょうが、やはりキチンとした英語を使いたいものです。
ちなみに、上のレシピはカタカナ日本語の指摘のために作ったもので、実際に作ってみてまともな料理になるとは思えませんのでトライなさいませんように。
さて、題名の「『牛肉ミンチでハンバーグを作る』を英語で言うと?」の解答は、おわかりのように「(I will) make hamburgers
with ground beef」または「(I will) make minced beefsteaks」などとなります
≪著者プロフィール≫
広瀬直子 フリーランスの編集者・ライター・翻訳者。過去約6年間『とりりあむ』の編集を担当させていただいております。
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