Who's Who Canada−著名カナダ人を知ろう

カナダ現代美術の巨匠
トム・トムソン



フリーライター  篠原 ちえみ


トム・トムソンの作品「April in Algonquin Park」
Tom Thomson Memorial Art Galleryの承諾を得て当ギャラリーウェブサイトより転載


「グループ・オブ・セブン」という画家グループをご存知でしょうか? その名の通り、7人のカナダ人画家によって設立されたこのグループは、一面に広がる雪景色、燃えあがるような色に染まる紅葉、荒々しい風を受ける湖など、手付かずの自然の美しさ、激しさを余すところなく描き、設立から80余年たった今でもカナダを代表する画家たちとして知られています。今回は、このグループの設立に多大な影響を与えた画家、トム・トムソンの生涯をたどってみたいと思います。

◇◇◇

スコットランド系の血を引くトム・トムソンは、1877年、オンタリオ州クレアモント付近の小さな町で生まれました。彼の生後まもなく、一家はジョージアン・ベイ周辺に移り住み、トム・トムソンはこの大自然のなかで多感な少年時代を過ごすことになります。

将来の方向を決めかねていたトムソンは、一時ビジネス・スクールに通ったりしながら青年時代を過ごしますが、やがてシアトルにいた兄弟を頼り、そこでデザインやレタリングを手がける商業画家として活躍します。6年間のシアトル滞在後、トムソンはトロントのデザイン会社「グリップ」に職を得ます。芸術家で詩人のJ.E.H. マクドナルドが主席デザイナーを務める「グリップ」では、カナダ有数の若手芸術家たちが才能を競っていたといいます。芸術への情熱を燃やす彼らは、週末に集まってはトロント周辺へとスケッチ旅行に出かけ、それぞれの腕を磨いていました。このときの経験は、トム・トムソンの人生の転換期となったと同時に、「グループ・オブ・セブン」設立の発端になったと考えられています。

オンタリオ北部の自然に魅了されたトム・トムソンは、アルゴンキン・パークやサドバリーの奥深く、木こり以外出会う人もいない場所へと足を踏み入れ、その野生美をひたすら描き続けました。自然の中でスケッチをし、トロントのアトリエで仕上げる----このスタイルは、トム・トムソンと「グループ・オブ・セブン」の画家たちが共通して使った手法でした。

トム・トムソンの死は、予期せぬほど早期にやってきます。1917年、アルゴンキン・パークの湖から彼の死体が発見されます。死因については、当初からさまざまな説が流れましたが(殺人説から自殺説まで)、美術史家たちの公式見解は「事故による溺死」となっています。ただし、カヌーの操縦にかけてはプロ並みであったとされるトムソンが溺死などするはずがない、という声も多く、事件を題材にした推理小説も発表されているほどです。

トムソンの死後3年後、7人の画家が集まって「グループ・オブ・セブン」を正式に発足させます。当初のメンバーはすべてトムソンの友人であり、その独特の作風や哲学はトムソン抜きでは語り得ないほどです。そのため、現代美術史では「トム・トムソンとグループ・オブ・セブン」という名で言及されることもしばしばです。

トム・トムソンの作品の多くは、オタワの国立美術館(The National Gallery of Ottawa)、クラインバーグにあるマクマイケル美術館(McMichael Collection)、トムソンゆかりの地、オーエン・サウンドのトム・トムソン記念美術館(Tom Thomson Memorial Art Gallery)で鑑賞することができます。



参考ウェブサイト
オタワ国立美術館:www.national.gallery.ca
マクマイケル美術館:www.mcmichael.com
トム・トムソン記念美術館:www.tomthomson.org



 

戻る