カタカナの弊害-服にまつわるカタカナ語


「妻にワンピースをプレゼント」を英訳すると?


ART WORDS 広瀬 直子


日本で普通に使っているカタカナ語を英語だと思い込み、使ってみたら通じなかった経験はありませんか。英語らしく聞こえても、ネイティブにはおかしく聞こえるカタカナ語は数え切れないほどありますが、このシリーズではテーマ別に日本人がカタカナに引きずられて犯しがちなミスを見ていきます。英語上級者でもちょっとした「カタカナミス」を犯すことはあります。あなたは大丈夫でしょうか?

◇◇◇

今回は、カタログ・ショッピングのメニューを覗いてみましょう。

  レディスファッション 
  メンズファッション 
・ トレーナー
・ ワンピース
・ パンツ
・ ソックス・ストッキング 
・ ジャケット・ブレザー
・ ワイシャツ
・ スラックス
・ コート・ブルゾン
 


「洋」服というだけあって、さすがに全部カタカナです。でもこのうちどれが英語で通用するのでしょうか?服の外来語に詳しい福剛(ふく・つよし)博士に聞いてみましょう。

福:  ご存知かもしれませんが「トレーナー」は和製英語で、英語では「sweat shirt」ですな。「Trainer」といえばスポーツでの訓練役などを指します。「I want a trainer」などと言って、服を期待していたら、ガッシリと筋肉のついた人間を連れて来られますよ。「トレーナー」を着てはいるかもしれませんが。はっはっは。
 
聞き手:  先生、カナダのブティックで「ワンピース」と書いてあるのを見たことはありませんね。
 
福:  その通りです。「One piece」といえば文字通り「ひとかけら」という意味しかありません。「妻にワンピースをプレゼントするんだよ」と言うつもりで「I am going to present one piece to my wife」なんてカナダ人に言うと「present one piece of what?(何をひとつ提案するの?)」と言われるのがオチでしょう。
ワンピースは「dress」です。日本語で言うドレスは「formal, long dress」というところですか。お気づきの通り上記の「present」も不自然ですね。英語の「present」という動詞は提案する、発表するなどの意味のほか、贈呈するという意味もありますが、これは賞状やトロフィーなどの仰々しい贈呈のことです。
聞き手: では、「I am going to present one piece to my wife」と言うと、カナダ人にはどんな風に聞こえますか。
 
福: その場の状況によっては「ひとまとまりのプレゼンをする」と聞こえるかもしれません。家に帰ってまで夫にプレゼンなんかされたら妻はたまりません。「妻にワンピースをプレゼントする」は「I am going to buy (give) my wife a dress」と言いましょう。
 
聞き手: 最近、日本語でもズボンのことをパンツと言うようになりました。
 
福: ズボンはフランス語の「jupon」が語源です。服のカタカナ語は最近徐々に英語にあわせてきています。 
聞き手: ソックスとストッキングはどうですか? 
福: 「ソックス」はいいですね。ただし英語の「stocking」は長靴下のことなんです。クリスマスにお菓子や小物を入れて子供に「プレゼント」する赤い靴下も「stocking」です。「Christmas stocking」と聞いて、女性がサンタやトナカイ柄のストッキングを履いているところを想像しないでくださいね。女性用の透明「ストッキング」は、素材から「nylons, nylon stockings」などと呼ばれますが、西洋でこれを履く女性は最近減りました。
 
聞き手: 「メンズファッション」ですが・・・。
 
福: ジャケットはそのままでOKです。ブレザーもまあOKとしましょう。ただ「blazer」というとカナダでは主に所属するクラブや学校の紋章をつけたものを指すんです。ワイシャツが和製英語なのは有名ですね。英語で言うなら「dress shirt」です。最近の会社では特定の日以外は「business casual」にするところが増えていますが、その場合に「dress shirt」 や「polo shirt(ポロシャツ)」と「dress pants」を着る人が多いようです。
 
聞き手: 「スラックス」は英語の意味と同じなのですか?
 
福: 同じです。「Dress pants」が比較的フォーマル、「slacks」がカジュアルですが違いの厳密な定義はありません。最近はフォーマルなのかカジュアルなのかわからない服も多いですからね。
 
聞き手: コートは英語でも「coat」ですね。しかしブルゾンとは・・・。
 
福: フランス語の「blouson」なんですよ。英語では「jumper」です。
 
聞き手: 日ごろ何気なく使っている服の外来語も英語で通じないものが多いのですね。ありがとうございました。
 


*福剛博士は架空の人物です(念のため)。

 

≪著者プロフィール≫
広瀬直子  
フリーランスの編集者・ライター・翻訳者。過去約6年間『とりりあむ』の編集を担当させていただいております。

戻る