リレー随筆


大リーガーはやっぱり凄い!!


資生堂 堀 利理
資生堂 堀 利理様


野球をこよなく愛する筆者の大リーグ論

イチローの年間最多安打数の記録更新が騒がれている昨今の大リーグですが、日本人選手たちの活躍には目を見張るものがあります。また、異国の地で自分の力を信じて戦っている彼らの姿を見るにつけ、駐在員の多くの方々が勇気付けられているのではないでしょうか。

先日、家族でニューヨーク・ヤンキ−ス VS トロント・ブルージェイズ戦を見に行きました。松井選手は4番打者を堂々とつとめ、見事3本のヒットを打ちました。あっぱれです。でも、もっと凄い打者がいました。3番を打つA・ロッド。ご存知、大リーグの最高給取りです。A・ロッドの何がそんなに凄いのか。それはズバリ「リーチの長さ」です。

A・ロッドは松井選手より身長で10センチ程度上回るので当然かもしれませんが、彼の手足の長さには驚かされます。大リーグのストライクゾーンは、日本と比べ外角にボール1個から1個半程広いと言われています。その外に広いストライクゾーンを利用し、大リーグのほとんどのピッチャーはウイニングショットに外のカットボールを使ってきます。日本では明らかなボール球です。A・ロッドは、その外角の、日本では明らかなボール球を、擦ったような打ち方でいとも簡単にライトスタンドへ運んでしまいました。

バットスイングの速度はおそらく松井選手の方が速いと思います。しかし松井選手にはその外のボールをバットの芯周辺で捕らえることはできません。物理的に届かないからです。日本人にはまねできないシロモノです。

日本ではよく清原選手が、外寄りのボールを右中間からライトスタンドへホームランしますが、これはあくまでもストライクゾーンのボールを打っての話です。A・ロッドは、日本でいう「ボール球」をホームランしてしまうのです。まさに凄いの一言です。リーチの長さで不利な条件にある松井選手が、日本で量産したような50本前後のホームランを打つことは、残念ながら至難の業と言わざるを得ません。

内野手の守備力、特に肩の強さにも驚かされます。大リーガーの内野手の守備位置は、日本のプロ選手のそれよりも1メートル以上深いと言われています。守備範囲を広げるために深く守ったとしても、肩が強いため、十分に一塁でアウトにできるとの計算です。ヤンキ−スのジター遊撃手や、レッドソックスのガルシアパーラ遊撃手のショートからの送球は、時速145キロを越えると言われています。これは、日本のプロ野球のエース級ピッチャーの平均よりも速い球速です。ピッチャーの投げる時速145キロは、一段高いマウンドの上から、ピッチャーズ・プレートを使い、大きく振りかぶったモーションから、誰にも邪魔されることなく投げる時速145キロです。でも彼ら2人の遊撃手の場合、三遊間のゴロを想定してみてください、レフトへ抜けようかという当たりを飛びついて捕球し、その不利な態勢を瞬時に立て直し、一塁へ時速145キロのボールを投げるわけです。にわかに信じがたい話だと思いませんか。

イチローも負けていません。実際に観戦した時の話です。イチローはプレーボール直後の第一打席でショートゴロを打ちました。普通のショートゴロです。遊撃手は体の正面で普通にボールを取り、普通にボールを一塁に送球しました。一塁手も普通にボールを取りました。内野手はいわゆるノーミスです。しかし判定は「セーフ」。観客は何が起きたのか最初わからず、場内は一瞬シーンと静まりました。そして一呼吸おいて大きな歓声に変わりました。一塁ベース後方には、右腕にはめたプロテクターをクールにはずすイチローの姿がありました。私は見ていて背筋に冷たいものが走り、鳥肌が立ちました。

次の打席、イチローの足の速さを警戒した内野陣は、守備位置を浅めに取りました。そして、イチローはヒットゾーンが広がったことに「どうもありがとう」とあざ笑うかのように、いとも簡単に野手と野手の間を抜くヒットを放ちました。すべてがイチローのために世界が回っているようでした。ブルージェイズとのこの3連戦で、イチローは計9本の安打を放ちました。まさにスカイドームはイチローのホームグランドと化したのです。イチローのサイボーグのような野球センスと運動能力は、大リーグ選手も脱帽するはずです。

初めて大リーグの試合を観戦した時は「何だか、タラタラとプレーしていて、基本に忠実とは思えず、噂ほどたいしたことないな」と感じましたが、やはりひとりひとりの個人技を見ると凄かった。アテネ五輪野球では日本は銅メダルに終わりました。伏兵オーストラリアに足元をすくわれた形です。カナダの健闘も光りました。大会は前評判どおりキューバが金メダルを獲得したのですが、大リーガーが参加する文字通り世界一を決める五輪を早く実現して欲しいものです。北京五輪では野球の競技存続に「?」がついています。野球を愛するものとして、全世界の最高レベルが結集する大会が、五輪になって欲しいと真剣に思っています。

先日、グラブを買いました。妻と娘にお願いして、キャッチボールをやってもらっています。グラブの芯で硬球をキャッチしたときのバシンという音と、手のひらがしびれる感触はほんとうに快感です。血が騒ぎます。



次号はカナダトヨタ社田中様にご登場をお願いしております。

 

≪著者プロフィール≫
堀 利理(ほりとしただ)
東京都出身。且草カ堂勤務。98年ドイツ・デュセルドルフ駐在、99年トロントへ横滑り異動。海外生活7年目に突入。7歳の娘を含め3人家族。趣味は、スポーツ何でも。トロントで少年(少女)野球チームを作りたいと密かに思っている今日この頃です。

戻る