リレー随筆


好きです ラーメン


カナダトヨタ 田中 靖規
カナダトヨタ 田中様


最初に断っておきますが、私は別にグルメではありません。
人並みにうまいものを食べたいという欲はありますが、うんちくを語るほどの知識はなく、カップラーメンを3食たべろといわれればできますし、自分がうまいと思っていたものを別の人が「これ、まずいなあ」と言っている場面にちょくちょく遭遇する、ま、まったく十人並みの人間です。

しかし、そんな私も「うまいラーメンを食べたい!」という思いは大変強いものがあります。いわゆるラーメンブームのはしりの世代ですから、これも取り立てて珍しいことではないでしょうが。

ここトロントでは日本のラーメンを始めとして、世界各地の麺類が食べられます。しかし、日本にあるような、アクが強く、クセがあり、分かり易く言えば、気が付くとコショーとニンニクをドバドバっと入れて、鼻水と汗を渾然一体とさせ、立ち上る湯気にふと覚醒し、見た目いかにも体に悪そうで、実際どう考えても体に悪そうな油ギトギトの汁をククーッと飲み干し、食べ終わると無駄話をすることなく、ささっとお会計をすませて出て行きたくなるような、そんなラーメン、なかなか見つかりません。

ならば作ろうではありませんか。通販で買った「自分で作るプロのラーメン」を本棚から取り出します。

大きな夢を見がちで失敗を重ねてきた、齢36歳の私は、少し賢くなり、できそうなことからはじめることにしました。麺はうちません。基本的にスープとチャーシュー、味付き玉子を作ります。

魚系、トンコツ系、牛系、鶏がら系、スープの種類にも色々ありますが、実は一番食べたいトンコツ系は以前豚足を使ってかなり味がくどくなったので、今回は王道、鶏がらをメインに攻めます。約4リットルの水に対して、鶏がら1羽、豚バラ(チャーシュー用)800グラムを中心にスープをとります。その他、キャベツ1/2個、長ネギ一本、昆布、りんご1個、ニンニク6かけ、しょうが適量、にんじん2本、たまねぎ1個、干ししいたけ3つなどが入ります。野菜がどれほど味を豊かにしているか分かりませんが、いかにも「自分で作っている!」感があり、鶏がら・豚バラをクズ野菜が包囲しているその姿は、「わびさび」すら感じるのです。

さて、そんなこんなで2時間、アクをとりながら、適宜水を足しながら、煮込みます。
このスープ、何も味付けなくてもおいしいです。きらきら光りながら浮かぶ油が、体に悪そうで、これまたそそります。

出来上がったら、次にスープの中で一緒に煮込んだ豚バラを使ってチャーシュー作りです。
うまみを閉じ込めるために一度チャーシューを軽く焼きます。
一方、できあがったスープ600 ccにしょうゆ250 cc、塩少々、みりん少々加え、一度さっと煮立てます。これに先ほど火を入れたチャーシューを漬け込みます。 1時間ほどつければ味もしっかりついてOKです。

お次は、味つき玉子半熟バージョン。日本では最近「とろ玉」とか言われているやつです。半熟玉子を作って、チャーシューを漬け込んだ先ほどのたれに40分つけるとできます。ゆで玉子は新鮮だと殻がむきにくいんですね。殻と白身の間に空気が入っていないからなんだそうです。知らなかった。玉子に味と色をしっかりつけるためには、白身の外の薄皮、(そう、ボクサーが応急手当にも使うやつですね)これをしっかり取らないといけないので意外と面倒なんですよ。ラーメン屋さん、いつも大変なんですね、ありがとう。

これで基本材料はほぼ揃いました。あとはネギとかモヤシとか具を用意します。そうそう、当然チャーシューをつけこんだたれはラーメンのベースにもなります。これをスープでお好みの味に調整します。

麺は中華モールで買ってきました。今回は上海玉子麺を使いました。

さ、今回のお味は如何か?
残念ながらちょっと失敗でした。みりんを少々のところ、どぼっと入ったのでかなり甘くなりました。
塩としょうゆでリカバリーを図るのですが、以前これをやりすぎてチョー塩辛くなったため、そろそろと味の調整をしたのですが、調整し足りませんでした。

意外と失点が大きかったのは見た目です。ラーメン鉢が我が家になく、うどんのどんぶりを使いましたが、まるで日本の狭いアパートに詰め込まれた大家族のように麺と具が片寄せあって、なんだか少しせわしい気持ちになったのです。今更ながら、食器をバカにしてはいけないと思います。あれやこれや反省ノートに書き込み、また次回への糧とするのです。

総コストは20ドル程度。ラーメン8杯分+十分な量のチャーシューなので、まあ冬の暇つぶし趣味としては悪くありません。はじめた頃は、これで商売になるのでは?と思ったりもしましたが、味もぶれますし、なかなか難しいです。ラーメン屋さんに改めて頭を垂れる次第です。

子供のとき海外に暮らしたことがあり、そのとき日本の食材に飢えたものです。
お米はパサパサでまずく、豆腐はインスタント、生魚は食べた記憶がなく、せんべいがこの世で最も貴重なものでした(せんべい、とは言っても小さなパックに10かけらぐらい入っている飛行機内で配られるもので、これを姉とじゃんけんしながら食べたもんです)。

それを考えると、和食を不自由なく食べることができる今の環境は、まさに隔世の感があります。たまにはそんな昔をしのんで、地元で手に入る食材で日本の味に挑戦するのも悪くはありません。

次号はJETRO Torontoの黒川様にご登場をお願いしております。



 

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