リレー随筆


虫干ししても消えない虫


日本貿易振興機構(ジェトロ)・トロントセンター 黒川 淳二


本は読むのも好きですが、買うのはもっと好きです。従いまして図書館というものはあまり好きではありません。しかも書店の雰囲気が好きですので、オンライン書店も好きではありません。"苦虫を噛み潰したような本屋の主人"でもいれば、そこは二重丸です。最近は家具やソファーを置いた格調高そうな店もありますが、書店内を歩く時に感じる何とも言えない緊張感は従来型の店の方で強く得られます。今日はどんな本に巡り合えるのだろうかという、素敵な女性に出会うようなあのワクワクドキドキ感がたまりません。  

さて、トロントの書店はどうでしょうか。書店チェーンの独占化が進み、一部を除き少なくとも一般の書店に特色はあまり見出せません。また、書棚に並んでいる書籍もカナダで出版されたものは少なく、毎日足を運ぶほどの魅力は正直感じません。トロントに赴任する前に、日本でカナダに関係する本(=カナダ本と呼ばせてください)を探し回りましたが、その数の少なさに驚きました。この驚きはカナダ国内の書店でさらに感じてしまうのですが、カナダの文化産業が置かれている立場を考えますと気持ちは複雑です。  

ただ、この「買いたい病」の虫はトロントに来ても収まらず、もっぱら独断と偏見で「これは」と思われるカナダ本を追い求め、ついつい1冊2冊と手が出てしまいます。速読は苦手で、しかも英語ですから読める量は限られます。従いまして、半ば本を買うことが目的になっています。  

最近の掘り出し物は、シアーズに買収されてしまった老舗百貨店イートンの商品カタログ集です。これは1901年の春夏号と秋冬号を1冊の本にまとめて復刻されたもので、一般の書店で購入しました。商品のイラスト(写真ではなく)から当時の生活ぶりが伝わってきて眺めているだけで楽しいものです。もう1点はニューファンドランド・ラブラドール州のセント・ジョンズにある古本屋で見つけた「I Chose Canada」というタイトルの本です。この衝撃的なタイトルを見て思わず買ってしまったのですが、これはジョセフ・スモールウッドという同州の初代首相による自伝書です。1949年、住民投票により、「やや遅れて」カナダに加わった同州をとりまく特殊な歴史的背景にも触れており、カナダという国の奥深さを感じる本です。  

いつか遠い将来、自分でもカナダ本を1冊出版し、しがない古書店でその本を発見するという野望を持ちつつ、興味深いカナダ本を追い求める旅はまだまだ続きそうです。  

なお、次回はリストウェル・テクノロジーの飯澤さんにお願いします。

 


≪著者プロフィール≫
黒川 淳二
2000年3月末にトロント着任。当地産の4歳、1歳半のチビ(男児)を抱え、育児に奮闘中(=妻から「奮闘するほど手伝ってくれてないぞ」との横ヤリあり)。皆様からの「そろそろ帰国ですか」のご質問も最近はめっきり減りました…。まだまだ?居るつもりです。

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