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トロントで人気上昇中の日本人若手アーティスト

Tomolennon トモレノン





フリーランスライター 三藤あゆみ


最近トロントの若者のあいだで「メトロピア(metropia)」というテレビドラマが人気だ。舞台はトロント。アジア系、ヨーロッパ系、アフリカ系など多様なバックグラウンドの若いアーティスト、ミュージシャン、青年実業家たちが主人公である。エピソードは家族・友人関係、仕事、学校、犯罪、ドラッグ、さまざまな現代社会の問題がテーマとなっている。

「メトロピア」に出てくるアパートやカフェには、まるで主人公たちの住む世界や彼らの心の中を覗いたような絵が飾ってある。これは番組のために描かれたものではない。トロントを拠点に活動している日本人若手アーティスト、Tomolennonさんの作品だ。モチーフの中心はトロントのストリートやカフェバー、都会で生活する若い女性の姿。Tomolennonさんはトロントの二大情報誌「NOW」と「eye」で読者が投票して決めるベストアーティストにも選ばれている。

特にアートに囲まれて育ったわけでもなく美術大学で勉強したわけでもないが、物心ついたときからいつも絵を描いていた。東京に住み画家をめざしていたが、他の多くの若者同様ワーキングホリデーでトロントにやってきた。それから5年、「最初は言葉もろくに通じなかった」というTmolennonさんが多くのカナダ人たちの心を掴んだのは、彼の絵の才能だけが理由ではない。エネルギッシュな行動力と、絵に対しても人生に対しても常にはっきりとしたビジョンと夢を持っているからである。


Copyright (C) Tomolennon


「トロントに一人でやってきてゼロからスタートし、アート一本で食べていけるようになるまでのお話を聞かせてください」

「ワーキングホリデーでトロントの生活をはじめてすぐ、この街に住んで絵を描いていきたいと思いました。はじめは会社で働いていましたが、やりたいことを実現するには中途半端ではダメだと思い仕事を辞めてしまったんです。チョイスがないからやるしかないという立場に自分を追い込んだ。それが分岐点だったと思う」

「どうやって生計をたてていたんですか」

「アートだけでやっていこうと決めたもののそう簡単にはいかないですよね(笑)。お金はないけど時間だけはたくさんあるからカフェを一軒一軒たずねて歩き自分の絵を見せて置いてもらえないかと頼んだ。そうしたら飾ってくれるというところが出てきて。絵を描くの以外は暇だからそのカフェに1日中座り込んで、興味を示すお客さんがいたら自分から話しかけてコメントを聞いたり、絵について語ったり・・・で、最後には買ってください!なんてお願いする・・・(笑)。路上で売ったこともあるし」

「・・・そういうことをしてみて、コレクターとか評論家にばかり評価してもらおうとするのは視野が狭いのではないか、アートのマーケットというのはもっと広いということを実感した。美術館だけではなくてカフェやバーなど発表の場はたくさんある。それに自分が表現したものをもっと広い範囲の人に見てもらえる。芸術に興味がなかった人が、ぼくの絵を見たのがきっかけとなってギャラリーを覗くようになるかもしれないし」

「日本では美術大学で専門的な勉強をしていないことが大きな壁となっていたけれど、トロントに来ていろいろなことを経験して様々な人に出会い、それを個性として生かすというような考え方ができるようになった。大きなアートイベントをプロデュースしたりもした。そして少しずつ貯めたお金を使ってショーにエントリーするようにしていったんです」

「プロデュースしたアートイベントというのはどんなきっかけで?日本ではキュレーターの経験はあったのですか?」

「経験は・・・ぜんぜん。2002年にトロントで"LET'S HAVE A DREAM"という、チャリティー・アートイベントを開催したのですが、それが初めての経験。じつは他の日本人アーティストと一緒に企画をスタートしたんだけど、あまりに大変でその人が途中で挫折して辞めてしまった。それじゃ一人でもやる、と言って進めていったら、どんどん規模が大きくなっていってしまい・・・オノ・ヨーコさんやアントニオ猪木さんが参加することになったりして。うわあ、どうしようという事態に」

「初めての企画がそんなに大きくなってしまったわけですか。それでどうやって実現させたんですか?」

「これは何とかしなければマズイ、と真剣に思いましたよ。皆が集まってきてくれてフタを開けてみたら経験もないヤツが何をしているんだ・・・なんてことになったら大変だし。で、本番までにまだ6ヵ月あったので、まずもう少し小さめのアートイベントを一度やって一通りのプロセスを経験してみることにした。それが日本の若手アーティストを集めてやった"HYPE TOKYO"です。それで結果的には両方ともうまくいっちゃった」

「Tomolennonさんの絵は、街中のカフェやバー、それからちょっと寂しげな女性が一人というのが多いですけれど、なぜそういうモチーフを選ぶのですか?」

「都会が大好きなんです。トロントに来る前は新宿の東京都庁裏に住んでいた。あのあたりは昼間はすごい人で混雑しているし、店もたくさん開いていて賑やかです。でも夜になると、がらーんとしてしまう。道にも誰一人歩いていないから同じ場所とは思えないぐらい寂しくなる。そのコントラストがとてもおもしろい。僕は寂しいものに魅力を感じる。悩んでいそうな、どことなく寂しそうな人がいるとつい見つめてしまう。街の中でまわりに人がたくさんいればいるほど寂しさが引き立ってしまう。賑やかなところほど寂しいというか。だからかえって暖かさに敏感になる。そういうのを追求するのがおもしろいというか魅力を感じるんです」

「この先の展示会やイベント予定は?」

「今月はButler's Pantryというカフェで巡回展をやっています。トロント市内やマーカムにもある店です。そして来年はトロント、バンクーバー、オタワを巡回するショーを予定しています。これは日系文化会館とのプロジェクトで、日本の影響を掘り起こしてみようという企画。外国に住んでいると自分の意思とは関係なく"日本人"という部分が強調される。それに遠くにいて日本を見るといろいろ気づかなかったことが見えるし、前はあたりまえだったことに改めて注意を払うようになるんですね。だから日系文化会館から話しがきたとき、これはおもしろそうだからやってみようと」

「新しい作品が見られるわけですね」

「作品は全部これから手がけます。僕は将来、日本人ということを強調するのではなくて一人のアーティストとして、Tomolennon、として絵を描いていきたい。だからこそよけい自分のルーツをしっかりと見つめておく必要がある。バックグラウンドを否定するのではなくそれがステップとしてあって、トロントに住んでユニバーサルな作品をつくっていきたい。だから来年のこのテーマはとても大切なものだと思っています」


Copyright (C) Tomolennon


なぜ本名を使わず"Tomolennon"なのかという質問に、「トロントに来てからカナダ人にも覚えてもらいやすい名前をと思って、英語で呼びやすい名前を考えたんです。本名がトモカズ、だからトモかな・・・でもジョン・レノンが大好きなので、レノンもつけちゃおうと。なんかおかしっくて、いいでしょ?」。

「芸術界の中だけではなく日常生活の中にアートを存在させたい、アートを一般の人に向けて発信したい」と考えるTomolennonさんは、わからない人は見なくていいという態度ではなく、ギャラリーなどには無縁のような人達にも声をかけていくことこそが大切だと言う。できるだけ多くの人がアートに興味を持つきっかけをつくりたいと。

展示会予定その他の情報、作品などを掲載したTomolennonさんのホームページ
http://pages.ca.inter.net/~tomolennon/



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