リレー随筆


素敵なオンタリオ・カントリー・ライフ


Listowel Technology, Inc.
飯澤 健


今年もまた厳しい冬の到来です。着任以来5回目の冬となりましたが、冬があってのカナダ。そこがこの国の魅力になっています。冬があってこそ、夏の楽しさがある、そういうところです。  


Listowel(リストウェル)

まず初めに会社の名前にもなっているListowelをご紹介いたします。Torontoの西130キロ、ヒューロン湖畔の町Goderichの東60キロに位置するListowelは、人口約5,300人の農業中心ののどかな町で、North Perth郡の中心地になっております。ここは、TV Japanも見られない典型的な田舎町ですが、かつては鉄道で栄え、現在でも町の一角には鉄道輸送で巨額の富を得た人々の住宅が築百年を経ても朽ち果てずに立ち並んでおります。そんな静かな町も、冬になるとスノーベルトに位置していることもあって様相が一変し、厳しい寒さと豪雪に見舞われます。  

私が生まれ育ったところは、ファッション街原宿・表参道・青山が徒歩圏内。家の前で殺人事件(実際にテレホンカード密売のイラン人の遺体が発見された迷宮入り)が起こったりする渋谷駅から歩いて5分程のところで、帰宅すると家の前は人・人・人の波で、どこからこんなに人が溢れて来るのだろうと思ってしまうほどの都会でしたから、此処とは正反対です。まあそんなところから来て良くやっているねえ、と思われがちですが、人間、環境が変わっても何とかやっていけるもので、なにしろ町は安全で町の人々は親切で良い人ばかりで、大変気に入っています。  


素晴しい自然

空気がとってもキレイなことや空が広々としており、たくさんの動物が共存しております。たまに、郊外で猟銃をもった迷彩服のおじさんたちに出くわし、「オイオイ他でやってくれよな、おっかないんだから」というようなこともありますし、ゴルフ場でアライグマを見かけたこともあります。ゴルフ場の人がアライグマを追い払っているのを見かけたときは、ボールがスライスして動物に当らなくて良かった、と思ったものです。  


冬の楽しみ

気候は厳しいですが、冬の素晴しさはこんなところで味わえるのかと感動することもあります。着任早々から何度も体験しましたが、真冬の気温は、マイナスが多く、"Wind chill" で寒さも増幅されます。カナダですから当たり前の話ですが、最高気温がマイナスというのがほとんどです。風の無い静かな雪の日は、防寒をばっちりして外に出ると、雪が結晶(あの雪印のマークと同じ)で空から降ってくるのが見え、そのまま地表に落ちてまわりは雪の結晶だらけになります。また、日差しが眩しい朝はダイヤモンド・ダストが見られます。ただ、一日中強風が吹くと、クルマのドアが開かなくなり、開くと今度は閉まらなくなります。特にミニバンのスライド・ドアは注意が必要です。冬のはじめはフリージング・レインに見舞われ、駐車場はスケート・リンクと化します。  

オーロラ、つまりノーザン・ライツもふと見上げると見えることがあります。最初は雲に光が反射しているだけ、と思いました。何せ、実物は初めてです。が、当然ながら都会と違いネオンは皆無です。星はクルマを路肩に停めて空を見上げていると時を忘れるほどきれいです。  


豪雪地帯

降雪も尋常でなく、日本の雪国育ちの人も舌を巻きます。雪がさらさらと軽いので、雪掻きをしても強風でまたもとに戻ります。最初は個人で雪掻きをしている駐在員もいましたが、ぎっくり腰になる人が出て、現在、一戸建ての人は除雪業者を頼んでいます。自身はアパートに住み、雪掻きは余り必要としませんので助かっております。会社駐車場の雪掻き後積み上げた雪山は、乗用車の高さの倍以上になります。  

これまでで2回、会社の駐車場が雪(ドアの高さまで積雪)で埋まったことがあります。そんなとき、此処の人々は喜んでスノーモビールを駆って出勤します。駐車場が雪に埋もれなくともハイウェイへの出口が雪と風で見えなくなることも何度もあり、こんなときは頭を新田次郎の『「八甲田山」死の彷徨』がよぎります。そんな時、家の外へ出ることは大変危険で、町の入口でパトカーがバリケードを張り、ラジオで外出自粛を呼びかけます。  

スノーモビールのツーリングコースが町を縦断し、現に会社の一角はコースの一部になっており、冬のGas Stationはスノーモビールで混雑します。スノーモビールは、まだまだ2サイクル・エンジンが主流で、エンジン音が大きいのが迷惑、深夜の走行はスロットルの空ぶかしはしないとか少し住民に気を使って欲しいものです。  


メノナイト

この辺りにはメノナイトの人々が多数居住しています。アメリカではアーミッシュと呼ばれているようですが、文明を拒絶して生きている(と言われている)人々で、起源はヨーロッパのスイスということです。彼らの交通手段は徒歩か馬車です。この辺りの道路は4車線分の広さがありますが、外側の車線は馬車専用になっております。 彼らは文明を拒絶していますので我々と余り接点はありませんが、メノナイトが作った農作物や畜産物はSt. JacobsのFarmers Marketで求めることが出来ます。ソーセージや卵は非常に新鮮で価格も手頃ですが、市が出る土曜の朝は大変混雑し、昼前には全て売切れてしまいます。  

毎年4月に、St. Jacobsに隣接するElmira(一般的にメノナイトの町と言われている所)ではMaple Syrup Festivalが開催され、巨大なパンケーキをメープルシロップで食べるお祭りで大変賑わいます。メープルシロップはMapleの木に管を挿して樹液をとり、それを大鍋で煮て上澄みを取ります。彼らの作るシロップにはライト、ミディアム、ダークと上澄みの層で三種類あり、パンケーキはもとよりヨーグルトにも合いますし、私はチャーシューを煮る時に使いますが味がマイルドでジューシーになります。空港で売っているものとは雲泥の差です。メープルシュガーやメープルバターも珍品、一度お試しになったら如何しょうか?  


オンタリオ絵画

自分では描きませんが絵画が好きで、カナダでも何枚か購入しましたが、この辺りを描く画家としては、現代ではPeter Etril Snyderが有名です。彼の作品にもメノナイトと馬車が良く登場しています。彼の作品は、Waterlooにある画廊に展示されており購入も可能で、我が家の居間には既に彼の絵が2枚、飾ってあります。  

五大湖畔の風景や雰囲気をよく表しているのは、Ontario Seven(グループ・オブ・セブン)と呼ばれている画家達です。そのなかで私のお気に入りはTom Thomsonですが、彼の表現する湖畔の紅葉は秀作です。はじめSt. JacobsのFarmers Market(書画・骨董もある)で見かけ、その時は作者も知らずに衝動買いで複製画を購入しました。その後、OttawaのMuseum of Artsに展示されているのを見たときは驚いたものです。  


ゴルフ・ライフ

最後になりますが、カナダで最も時間を費やしているのはゴルフです。Listowel Golf & Country Clubという開場1920年という老舗(?)のゴルフ場が我が町にあり、そこはNorth, West, Eastの27Hを擁し、弊社からクルマで5分程の距離です。シーズンはもちろん5月から10月までのたった6ヶ月で、メンバーシップは一年毎の更新ですが日本に比べると会費も手頃です。トロント周辺は最近高くなった、というのがトロント近辺諸兄のお嘆きですが、平日は9H、トロント周辺への遠征日以外の土日は18H(会費を払うと日本と違いPlay feeは無料)プレイしています。  

会社でもシーズン中は従業員主催のLTI Golf Leagueを毎週木曜日に開催し、また毎年一回クラブ主催のチャリティーゴルフ大会には会社として参加しております。この大会では表彰式に続くアトラクションで、地元出身のNHLプロ・ホッケー選手と楽しく語り合えるのもカナダ・オンタリオならではと言えるのではないでしょうか。  


住めば都

日本に比べれば不便(Toronto Downtownから2時間、空港から1時間半)で厳しい気候の土地柄ですが、自然に親しみたい皆様は是非一度、お訪ねください(冬以外。冬ならスノーモビールで)。昨年11月には、カーリングのJOC日本強化選手もListowelを訪れListowel curling Clubで試合(一般参加で2勝2敗)をしています。  


なお、次回は富士写真フィルムの土肥さんにお願いします。

戻る