
リレー随筆
"No Pain No Gain" --ゴルフの病気克服術--
フジフイルム 土肥 幸児
筆者がゴルフを始めてから23年が経つ。その間、典型的なゴルフの病気はほぼ全て経験しており、都度なんとか克服してきた。今回は、筆者の経験に基づくゴルフの病気克服術をいくつか紹介したい。典型的なゴルフの病気とは具体的には「スライス病」「フック病」「シャンク病」などを指す。ゴルフ場が混雑する夏場にかけてこれらの病気は感染力を増し、毎年トロントでも猛威を振るっているに違いない。
幸いこれらの病気による生命の危険はないが、しかしながら万人に効く治療薬もない。世のゴルファーは処方箋を求めてさまざまなことをする。最悪なのは、矯正レッスンを受けて更に泥沼にはまってしまうことである。中にはヤブ医者に掛かったと嘆く方もおられるかも知れないが、診察を受ける側にもある程度の知識が必要なのである。言われたことを自分なりに解釈してやってみたが、どうも治らない。結局治らないから、治療を拒絶して自己流でパッチをする。 荒療治だ。怪我した左足をかばい、今度は右足を痛めてしまうというようなもの。それでは苦労は絶えないと思う。
こういうゴルフの疾患にどうやってうまく対処していけばいいのだろうか。実はそんなに難しいことはない。健康管理と似ている。バランスの取れた食生活と十分な睡眠、それに適当な筋肉運動・・・付け加えるとすれば、ゴルフスイングに対するささやかな研究心と向上心である。アドレスに入る前からスイングは始まっていると言うが、ゴルフスイングに普遍性、連続性、そして安定性が求められていることは誰もが知っているのに、この一番肝心な前段階の普遍性を欠いている方が多いのではないだろうか。何故これが一番肝心なのか?
答えは簡単である。テレビでプロのショットシーンを見ればよい。毎回ボールに対して同じ場所に立って目標を定め、同じリズムと決まった仕草(癖)でアドレスに入る。この間に目標設定(スタンスの向き)とグリップ(クラブと体の一体化)、そしてリズムがセットされる。少なくともこの部分を完璧に通過すれば、ナイスショットの確率は80%以上になると筆者は信じている。「ダフリ」と「トップ」の原因もここにあるので、それらも減ること間違いない。筆者の場合、10代の頃に青木功プロと中島常幸プロ(注:現在は中嶋と書く)の初動を真似し始め、それらをミックスした自分のものを完成させた。それは未だに抜けない(良い)癖になっている。
トッププロなら誰でもという訳ではないが、真似をするのが一番近道と思う。カナダが誇るMasters Champion Mike Weirの中途半端なワッグルを真似ても結構と思う(筆者は最近取り入れてみた)。初動部分に確固たる自分のカタチを作るだけで不本意なミスショットは高い確率で克服できると思うが、それでも治らないという場合は、寧ろその不治(?)の病とうまく付き合っていくことで克服の道を探せると思う。少なくとも「スライス」や「フック」が打てることは大きな武器である。その武器を捨てて真っ直ぐなボールを打ちたいと願うのはもったいない。
Lee Trevinoというプロは個性的なスイングをしているが、スライスボールをコントロールする名手である。何度かプレーを見たことがあるが、彼は真っ直ぐのボールは打たない。また、筆者は日本で活躍していたBrian Jonesプロのキャディを務めたことがあるが、彼はプロとしては稀なフックボールの使い手である。このように、曲がるボールを武器にしているプロは多い。いや、大多数のプロはそうかもしれない(真っ直ぐのボールは左右どちらにも曲がる危険性があり、プロは嫌う)。これで万年スライサーやフッカーの方も大丈夫。後は曲がりを少しだけコントロール出来るようになれば、病気は陽気な友達に変わる。
さて、音を聞いただけで感染するとも言われているほど厄介なのが「シャンク病」である。筆者は91年に袖ヶ浦CCで開催されたブリヂストントーナメントの初日、どこかのPAR3で羽川豊プロが打ったひどいシャンクを忘れられない。世界のレフティと名を馳せた名手ですら、「ペチッ」という耳障りな乾いた音を立てて「シャンク」を打つのだから、アマチュアは「シャンク」して当たり前である。しかしこれには特効薬がある。右足を30cm後方に引いて、かかとでゴルフボールをふんずけてショットしてみてほしい。保証はないが、臨床実験では多くの成功例が報告されている。
もう1つだけ厄介な病気がある。突発性チーピン(低く飛び出して急激にフックするボール)である。ここ一番という時のドライバーショットがよく侵される。何故チーピンになるのかは諸説あるが、「飛ばしたい」という誘惑に上体右半身が極度に緊張することが最も有力な理由とされている。欲を捨て、平常心を保つことが求められる。アマチュアゴルファーの場合、「飛ばし」と「スコアメイキング」は反比例するものだとご自身に言い聞かせることが大事である。飛ばしの快感は、百害あって十利ほどしかない。
これらの病気は誰もが経験するもので、かかったからと言って恐れることはない。上達に伴う必要なプロセスと考えればいい。ゴルフの基本をなおざりにせず、しっかりと練習に取り組めばじきに去っていくものである。ゴルフライフを楽しく過ごす為にも、今のうちにエンジンをスタートさせ、ライバルに差をつけてみては如何。
番外編として、学生ゴルフ界で使われていたゴルフ関連用語を紹介する。学生ゴルフ界出身の深堀圭一郎プロや丸山茂樹プロなどは今でも使っているかもしれない。
| 「ジョン」 |
ダフること (ダフった時そういう音がするから) |
| 「ペチ」 |
シャンクのこと (同上) |
| 「ウラシャン」 |
ホーゼルの裏側に当たって、左足をかすめて左45度に飛び出すシャンクのこと |
| 「マブチ」 |
チーピンフックのこと(マブチモーターを積んだ安いラジコンカーが左にしか曲がらなかったことから由来) |
| 「チュルチュル」 |
調子が非常に悪いこと「野ばらのエチュード」(松田聖子の歌詞♪テュールリラーテュルリラー♪が変化した) |
| 「マントビ」 |
大きな飛距離が出たこと("マン"は単なる接頭語) |
なお、次回は東芝カナダの伊藤様にお願いします。
≪著者プロフィール≫
土肥 幸児
昭和43年生まれ。神奈川県出身。富士写真フイルム国内営業、海外営業を経て99年トロント赴任。趣味は車の他、ホテルのアメニティーグッズ収集、スキー、旅行、それに地図を眺めること。家族は妻と息子2人。 |
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