インタビュー・シリーズ この人に聞きたい


マルチリンガルテレビOMNIの日本語番組
「Wai Wai Wide」司会


石原千秋さん

石原千秋さん


フリーランスライター 三藤あゆみ


トロントの多民族文化は、各国からの移住者が経営するエスニックレストランや多国籍な雑貨屋、スーパーなどにとどまらず、45カ国語のテレビ番組を放映するロジャースグループのテレビ局もあって、これもまたマルチカルチャーの象徴として地元市民の自慢のひとつである。英語しか話せないカナダ人製作スタッフやそれぞれ違った文化と価値観を持つ各国からの移住者が一緒になって働く興味ぶかい職場でもある。

毎年、商工会新年懇親会を進行役で盛り上げてくれる石原千秋さんは、日本語番組「Wai Wai Wide」の司会をつとめて6年になる。

今回は、愛知万博のテレビ取材からトロントに戻ったばかりの石原さんにお話をうかがった。


番組の取材で愛知万博から戻られたばかりだそうですが、いかがでしたか?

今回は番組のもうひとりのレギュラースタッフ中村さんと、局のカメラマン3人という海外取材では最小人数のスタッフで、正味約1週間のスケジュールで行ってきたので、毎日朝から晩までの強行スケジュールとなりましたが、楽しんできました。万博会場だけではなく、徳川家康の出生地、岡崎など周辺の歴史や見所も取材しました。


万博会場は盛り上がっていましたか?

たいへん盛り上がっていました。日本の展示やアトラクションが一番すばらしかったですね。カナダ館はハイテク、コンピューターや大自然の映像などを呼び物にしていましたが、もっといろいろなカナダの魅力も見せられればいいのにとも思いました。全体にかなりの人出でにぎわっていて、すでに目標の半分以上の人数が万博を訪れたと聞きました。私たちが行ったときは、外国語はほとんど聞こえてこなかったので日本人のお客さんがほとんどだったと思いますが。


取材したものは「Wai Wai Wide」で見られるのでしょうか?


7月中にシリーズで放映するので、このインタビューが掲載される頃にはもう終了していますが・・・他の言語の番組でも吹き替えをしてニュースに使われる予定です。歴史や街の紹介などもあるのでいろいろな形で使える取材内容です。

特番といえば、マルチリンガル(Diversity)プログラムで、8月、9月に、また違った世界の文化の企画があります。各国の風景や生活の特集なんですが、「Wai Wai Wide」の時間帯には日本特集が放映されるのでぜひ見てください。


ところで石原さんは、カナダに移住してきてからずっとアナウンサーというか、"声"のお仕事をされているのですか?

カナダに移住してきて6年になりますが、トロントに来てわりとすぐCFMTテレビ(OMNI)で仕事をはじめました。OMNIでは出演だけではなく、コーディネートや製作、営業までいろいろな仕事をしてきています。日本では出演者がこんなになんでもやることはないので、大変ですがよい経験です。テレビの他にも様々なコーポレートビデオやコマーシャル、アナウンスなどで日本語の声優が必要なときに出演しています。


日本でも放送業界で仕事をしていたんですか?

はい。でも、大学を卒業して就職したのは沖縄の新聞社だったんです。大学で、マスコミ・放送を勉強し、アナウンスが専門だったのですが、琉球放送に応募したらなかなか競争率が高く難関で、最後の最後まで残ったんですが、テレビ局でのポジションは逃してしまった。新聞社に勤務しているうちにコミュニティや会社のイベントの司会などを任されるようになり、ある日ラジオから声がかかってDJとしてレギュラー番組に出演するようになったのが放送業界へのデビューです。新聞社にそのまま勤務しながらラジオやテレビなどに出演していました。


日本でキャリアを積んだということですが、英語圏のトロントでカナダ人やその他の国出身の人々と一緒に日本語番組をつくるというのはどんな感じですか?

始めたばかりの頃は大変でした。総合プロデューサーはカナダ人、カメラマンやエディターなど製作スタッフも、カナダ人やさまざまな国からの移住者、という環境で日本語の番組を作っていくわけなので・・・最初はもうなんといっても言葉に苦労しました。今では慣れましたが、撮影も編集も決められたスケジュールと時間制限の中で指示からリクエストからすべて英語というのは苦労しました。細かい内容や微妙なニュアンスとなると、スタッフとコミュニケーションするのは今でも大変です。でもね、細かいことを言っていたらきりがないので「結果重視」という姿勢がすっかり身についてしまいました。それに、小さなことにこだわりすぎないので、仕事が早く進み、まとまりやすい、という意外な効果が・・・(笑)。

出演者の立場としては、日本よりカナダのほうが仕事をしやすいです。日本だと出演者はアナウンサーも含めて皆"芸能タレント"として扱われることがほとんど。最近の日本はどうかわかりませんが、私がいた頃は業界一般に、プロデューサーに好かれた人が、かわいがられてどんどん出世するというパターンが多かった。カナダは出演者も、もっとプロフェッショナルです。ニュース番組ならアナウンサーもレポーターも基本的にプロのジャーナリストとして扱われます。皆がはっきりと意見を言うし、必要であれば上司やプロデューサーに反対意見をはっきりといいすぎて仕事が減るようなこともありません。


現在は、日本人スタッフは何人いますか?

主要スタッフは、3人です。製作やレポートを含めさまざまな仕事をするレギュラースタッフ1人と、レポーターがいます。その他にも一時滞在者のアシスタントやレポーターが、番組作りに協力してくれています。


仕事をしていてとても大変だった出来事や、トラブルなどありましたか?

トラブルは、小さなことはあったと思いますが、今ぱっと思い出せないのでたいしたことなかったんでしょうね。大変だったことは・・・あります!ポジティブな経験でしたけど。私がOMNI(cfmt)で働きはじめた頃、ちょうど日本語番組の内容が一新されたばかりだったのですが、入ってしばらくすると日本人スタッフ不足とスポンサー不足が重なって、このままなら日本語番組は中止、という事態になってしまったことがあるんです。

ある日、マルチリンガル部門(Diversity Department)の総合プロデューサーに呼びだされて、「スポンサーがとれないから番組つづけられないのは、しかたがないね・・・」と言われたんです。何十年も続いてきた日本語放送を、しかもマルチカルチャーの日本代表の番組食いを私たちの代で潰してしまうなんてとても残念なことですからなんとかしなくてはと思いました。で、私は番組の司会で出演と製作の一部が主な仕事でしたが、「それなら私がスポンサー探してきますから、時間をください!」と言ってしまった。


営業もやることになったんですか?

そうなんです。「6ヶ月以内に7社集めてくること、それならなんとか続けられるから」、とプロヂューサーからの返事。まだトロントに来て間もなかったので、コミュニティの方も日本企業の方も面識がなく、やりますとい断言したものの、じつは内心どうしようかと思いました。番組のほうも、もっと充実させていく必要があったのに日本語デスクはスタッフが少なくて、それも大変でした。それで、6カ月のあいだ奔走しました。ところが、あと1社で目標達成、というところで時間切れになってしまったんです。

だから、再びプロデューサーのところに乗り込んでいって、「ここまでがんばったんですが、あと1社だけ足りないんです、なんとかしてください」と嘆願。カナダ人プロデューサーも熱意を買ってくれたのか、番組が続けられるように会議にかけてもらうことができ、結局、「Wai Wai Wide」の存続が可能になりました。

今では日本人だけではなく中国系や韓国系コミュニティの人々にもお馴染みの番組になっていますが、そんな過去があったわけですね。

今日は日本から戻ったばかりでお疲れのところを、本当にありがとうございました。これからも、おもしろい番組作りを、ぜひがんばってください。




「Wai Wai Wide」
OMNI-2
日曜日8:30pm
水曜日2:00pm

http://www.omnitv.ca/





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