Who's Who Canada−著名カナダ人を知ろう

 

マイケル・オンダーチェ (Michael Ondaatje)
「イングリッシュ ペイシャント」を書いたトロントの作家

Michael Ondaatje
 



フリーランスライター 三藤あゆみ


マイケル・オンダーチェは、「イングリッシュ ペイシャント(英国人の患者)」で英国最高の文学賞であるブッカー賞を受賞した、世界中に知られるカナダ人作家のひとりだ。この作品は後に映画化され、ジュリエット・ビノッシュの名演技でアカデミー賞を総なめにしたので、ストーリーを知っている人は多いと思う。

オンダーチェは30年以上トロントに住んでいるが、彼の書いた有名な作品の舞台がセイロン、イタリア、アメリカ西部などであるため、カナダ国外ではオーダンチェがカナダ人だということを知らない人もわりといるらしい。とは言っても、トロント住民の多くの人々と同じく、彼も海外からの移住者である。

生まれ故郷はインドの南にある熱帯の島、セイロン(現在スリランカ)。家族は英国植民時代のセイロンでゴムと紅茶の農園を経営し、英語を話すエリートだった。オンダーチェ自身はオランダ人、タミール人、シンハリ人の混血である。農園を管理していた父はアルコール中毒と躁鬱病でトラブルの多い人だったらしいが、母親のほうは舞踊家で、音楽、芸術、政治などさまざまな分野にも興味を持つ賢く活動的な女性だった。彼女は舞踊においても政治的にもモダンダンスの基礎をつくったアメリカ人イサドラ・ダンカンの影響を強く受けていたという。オンダーチェはイギリス人学校に通いながらセイロンで少年時代を過ごすが、父親のアルコール中毒がひどく手におえなくなり、母に連れられて12歳の時イギリスへ渡る。

オンダーチェの少年時代の体験は、回想録「Running in the family(家族を駆け抜けて)」にフィクションを交えながら綴られており、日本語訳も出版されている。

カナダに移住してきたのは彼が20歳になった年。トロントに落ち着くことになってから、トロント大学の文学部を卒業し、キングストンのクィーンズ大学で修士号をおさめた。その後、ヨーク大学やグレンドンカレッジなどで教鞭をとりながら、トロントを拠点に作家活動を行ってきた。今では「カナダ人」というのが一番しっくりくるアイデンティティなのだそうだ。

映画や演劇の演出もするし、写真家としてもプロの腕前をもつ多才な人だが、もともとは詩人として文学界にデビューした。小説は詩的な美しい表現や文体でよく知られているが、詩の作品のほうは、殺人、撃ち合い、流血などを描いたものも多々ある。その代表作ともいえる詩集、伝説的存在のアウトロー、ビリー・ザ・キッドをテーマにした「The Collected Works of Billy the Kid(ビリーザキッド全仕事)」ではカナダ総督賞を受賞した。

オンダーチェは現在も、ヨーク大学文学部で講師として詩のコースを教えており、妻であり作家としての仕事仲間でもあるリンダ・スパルディングとともにトロントで暮している。


和訳されているマイケル・オンダーチェの小説:

Coming Through Slaughter(1976)「バディ・ボールデンを覚えているか」
Running in the Family (1982) 「家族を駆け抜けて」
The English Patient (1992) 「イギリス人の患者」
Anil's Ghost (2000) 「アニルの亡霊」




≪著者プロフィール≫
三藤あゆみ
フリーランスライター/翻訳家、映像プロダクション通訳。日本の高校卒業後イギリスへ渡り、後にトロントに移住。埼玉県生まれ。
 

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