思い出の街角




思い出の街角 
ファイナンシャル・プランナー 松崎敬三


ミネベア社故高橋会長の、"男なら仕事を3回以上変えろ"と言う仰せに従い、転職を重ねていると、仕事場で知り合った人たちと共に旅した街が自分にとっては思い出に残ります。その中でも、メーカーで勤務しているときに出会った2人のカナダ人との飛騨高山への一泊旅行は、いまでも心に焼きついています。

徳川幕府直轄だった天領高山は町人の町として栄え、その伝統は町衆文化にあります。日本の古い技術、伝統、文化などを、一緒に旅をした彼らに理解してもらえればと思い、そこに一泊することにしました。

飛騨高山の伝統的な朝市、飛騨の豪雪から農民を守った合掌造りの民家と生活を後世に伝えるために建設された飛騨民族村(飛騨の里)、自転車に乗って飛騨高山の古い陣屋・町並み巡り、代表的な町屋作り日下部民芸館、飛騨の匠の伝統と技術を謳う高山屋台館、高山の町並みと自然を展望できる本陣平野屋別館の最上階の温泉浴場、そして松坂牛の次に位置されると言われる飛騨牛のしゃぶしゃぶと日本酒鬼殺しでの夜の宴…と、一泊旅行で可能な限り、ぎっしりとスケジュールを組みました。しかし、予定は未定とはよく言ったもので、当日、計画は一変してしまいます。

飛騨高山の本陣平野屋別館に夕方5時到着し、自分の友達兼案内人と合流、その日の夜と翌日のスケジュールを説明してもらい、さっそく皆で展望浴場へ参上。旅行疲れの体をいやそうと思いきや、混浴と聞いたとたんに若い方のカナダ人が拒絶反応。説明するのに一苦労。その若い方は、高温の温泉には体を浸すことができず、二苦労。しかし、見晴らしの良さと浴場の見事さ、温泉のまろやかさなどで感動してくれた彼らの様子を見て、ちょっとほっとします。夜の宴では、白人は本当に肉が好き?!らしく、飛騨牛を「旨い旨い」といい、食べること食べること、酒は飲むわで皆大酔っ払い。そして、その夜は獏睡するかと思えば、若いカナダ人が急性アルコール中毒になり、完全にダウン。

次の日の観光は小生ともう一人のカナダ人、そして案内人の3人になります。どんなに飲んでも次の日は早い、中年のカナダ人と日本人はスケジュールどおり行動します。

朝市を覗き、自転車で古い町並み巡りをし、からくり人形が運ぶおみくじを貰い、飛騨の里、そして見事な技術と豪勢さを競い合う数々の屋台を見物、目を見張るものが山ほどあります。

中年のカナダ人(社長)は、ものの見事に文句ひとつ言わずスケジュールをこなし、若いカナダ人は(営業課長)は、結局文句言ってダウンしてしまい、観光は一切せず寝たっきり。そして、帰りの新幹線へ。

この対照的な二人との旅が本当にどんなものだったかは、実際その場にいた者にしかわからないかもしれません。しかし、旅を共にしてこそ味わえるこのような喜怒哀楽が、訪れた高山の街にここちよいフレーバーを与え、印象深い地となったのだと思います。今ではみな当時の会社を離れ、音信不通です。2人はどうしているのか…。


 




≪著者プロフィール≫
松崎敬三
日系金融機関の派遣社員としてカナダに赴任、以後加銀系リース会社、現地メーカーを経て、ファイナンシァル・プラナーになり、主に、日本人派遣社員やご家族に財形(保険、貯蓄のみならず)のアドバイスを提供しています。

戻る