リレー随筆

カナダとの異文化コミュニケーション

日立工機カナダ 加藤 雅巳


小学生のころ、手先が器用であった私は(今はその片鱗すらありませんが)、ボンナイフを使って鉛筆の上の部分をこけしの様に彫刻し(白人は鼻を高く、アジア人は鼻を低く)、ラッションペンで皮膚、目、髪の毛の色を塗りわけ、さまざまな国の人の顔を作り上げていました。今思えば私が小学3年生であった1970年、大阪万博に足を運び、さまざまな国のパビリオンを見学し、世界には何と多彩な人種がいるのだと感銘を受けたのが、私の異文化コミュニケーション(正確には異文化コンタクト?) の始まりだったと思います。それ以来、子供ながらに海外への強い憧れがありました。当時、日曜日の朝放送の「兼高かおる世界の旅」は、もちろん毎週欠かさず見ました(今はなき、スポンサーのパンナムが懐かしい限りです)。

海外赴任は、そんな私の子供時代の念願をかなえてくれました。トロントには昨年8月に赴任いたしました。海外赴任は、1994-1997年の米国(ロス、シリコンバレー)の3年間に次いで2度目ですが、今回は小さいながらも一家の主として、営業だけでなく経理や30数名の現地従業員の人事にも目を配らなければならず責任重大ですが、大きなやりがいも感じております。  

赴任前に「地球の歩き方」でカナダについての予備知識を勉強してきたつもりですが、私にとってのカナダの第一印象といえば、なんと多彩な人種が暮らしているのかということでした。会社に出社した初日、従業員を目の前にして、私の小学校時代に作った鉛筆こけしのいろいろな顔を思い出した次第です。

さて、カナダという異文化との私なりの接し方について、少々お話したいと思います。郷に入っては郷に従えと言うことわざがありますが、外国人である我々が、他人の家に土足で上がりこみ、外国製品を販売しようというのですから、日本のやりかたをそのまま押し付けていくだけでは成功するはずはありません。根本として、カナダの風土、人、歴史、文化、慣習、厳寒の気候でさえ、カナダの全てを尊敬し、売らせて戴くという謙虚な気持ちが必要であると考えております。

私自身がおだてられれば木にも登る性格なので、社員の皆さんには気持ちよく仕事に取り組んでもらい、如何にすれば彼らが個々の力を100%出し切ることができるかを考えております。たとえるなら(社員を鳥にたとえるのは不適切かもしれませんが)、長良川鵜飼の鵜匠のように、自分自身では魚を採ってくることはできませんが、鵜がより多くの魚を捕らえてくるような環境を社員全員に与えることを心がけております。しかしながら、日本企業としてのモラル及び、本社の意向に反する事だけは厳重に注意しなければならない事は言うまでもありません。

ところで、カナダは歴史的な背景から、英語、仏語という2つの公用語を有しており、ケベック州では仏語しか話せないというお客様も少なくありません。お客様を招待してのクリスマスパーティーやインセンティブツアーなどでは、そんなお客様のために、英語だけでなく仏語のスピーチも用意いたします。メモをただ読むだけでは日頃の感謝の意が伝わりませんので、会社のバイリンガル社員に頼んで英語のスピーチを仏語に訳してもらい、1週間前から猛特訓いたします。努力の甲斐あって何とか毎回披露する事ができておりますが、いかんせん発音が難しく、本年5月のメキシコ、カンクーンへのインセンティブツアーのパーティーでは、"日本語なまりフレンチ賞"という賞を戴いてしまいました。たくさんのお客様の前での英語、並びに仏語でのスピーチはいつもながら緊張いたしますが、それも日本では決して味わう事のできない異文化ならでわの経験であると心がけ、緊張感をエンジョイする気構えで毎回挑んでおります。

Sign of Gooderham & Worts Limitedさて、異文化の中に身をおく私たち駐在員としての最大の特権は、週末やちょっとした連休にでも、その国の名所、あるいは観光地に気軽に足を運べることだと思います。今年の7月に、カナダに赴任以来、初めての家族旅行としてカナディアンロッキーに行きました。数多くの野生動物が生息する全く手をつけていない自然環境、美しい大自然を目の当たりにする事ができ、日頃のストレスを忘れさせてくれる旅となりました。特に忘れられない思い出となったのが、エルクが突然遊歩道に現れ、目の前5メートルまで接近できた時で、夢中でカメラのシャッターを切りました。リタイア後にかみさんを連れてまた行きたいと思っております。

あと何年カナダに居るか、その後は他国へ横滑りか、あるいは日本へ帰国かは神のみぞ知る、ですが、私にとって異文化コミュニケーションはライフワークです。どのような形であっても一生携わって行きたいと思っております。

理系出身で文才がありませんので、取りとめのない文章となってしまいましたが、今回リレー随筆を仰せつかって、改めて「随筆」の意味を辞書で調べてみると、「自己の見聞・体験・感想などを筆に任せて自由な形式で書いた文章」とあったので、思いつくままに自由に書いてみました。


次回は、近鉄インターナショナルエキスプレスの関口様にお願いします。

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