
思い出の街角

イスタンブールに愛を込めて
スズキカナダ 山下和行
イスタンブールとの馴れ初めは中学生の頃、一曲の流行歌を通してでした。 「光る砂漠でロール 夜だけのパラダイス・・・」 何とも魅惑的な歌声に魅せられてイスタンブールへの思いを膨らませていたわけですが、それから15年が経過し、ついにイスタンブールとの直接的な出会いを迎えることになりました。 国内の販売会社出向を終え、浜松の本社にて中近東向け四輪車の輸出営業に携わったことから、93年の初出張以来8年間に渡りイスタンブールを訪問する機会を持ちました。 「飛んでイスタンブール」を聴きながら描いた街のイメージと実際とは決してイコールではなかったのですが、惹き込まれるような異国情緒はしっかりとそこに存在していました。
サウジアラビアやクウェートといった、こてこてのアラブ諸国を歴訪する中で、トルコは私にとってまさに砂漠の中のオアシスでした。 一方、担当する17カ国のうち一回の出張で訪問し得るのはせいぜい5カ国程度で、トルコに立ち寄らなければならないような理由をあれやこれやと創作していたものです。 そうこうするうちに強い味方として登場したのがトルコ航空による関西空港−イスタンブール直行便です。 これにより中近東周遊の玄関口として毎回の出張にトルコ訪問を組み入れることが可能になりました。
観光案内できるほどの見聞は持ちませんので、イスタンブールでのエピソードを少々綴らせて頂くことにします。
イスタンブールには余興にベリーダンスを見せるレストランが何軒かありますが、これはガラタタワーにあるレストランでのひとこまです。 私を含め10名程度の男性客がステージに上がり、ダンスの手ほどきを受けていたのですが、次第に熱気を帯びる中、ダンサーが私どもにシャツを脱ぐよう仕掛けてきました。 腰痛用のあまりお洒落でない腹巻を捲いていた私は頑としてそれを拒否した訳です。しかし結局、周囲の拍手喝采に屈することとなり・・・ 周囲の拍手喝采が一瞬にして失笑に変わったことは言うまでもありません。
トルコ料理はフランス料理、中華料理と並んで世界の三大料理と称されますが、独特の香辛料がどうしても私の口に合いません。 連日のトルコ料理に疲れ果てた私は取引先との夕食会を急遽キャンセルし、最寄りのマクドナルドへ出かけました。 空腹も極限に達しており、"スペシャルバーガー"なるものを三個注文、かぶりついたその瞬間、例の香辛料が鼻を突いてきました。 マクドナルドの味付けさえも変えてしまう彼らの食へのこだわりに脱帽させられながらも、それ以降イスタンブールでマクドナルドに行くことはありませんでした。
新婚旅行を(アルトに乗って)近場の温泉で済ませてしまった若気の至りがその後、私の肩身を狭めてきたのですが、結婚10年目にして漸くその汚名返上のチャンスが巡ってきました。 当然のことながら旅行先は愛してやまないイスタンブールです。 トプカプ宮殿、アヤソフィア、ブルーモスク等の観光名所での写真に混じって、言葉巧みに乗せられたラクダの背の上で顔を引きつらせた家内の写真があります。 一生の不覚だと家内は騒ぎ立てていますが、私と二人の息子にとっては大きな笑いを提供してくれる貴重な一枚になっています。 ところで、嘘のような話なのですが、あのトルコ北西部大地震が起こったのは、私達がイスタンブールから地中海沿岸のアンタルヤに移動したまさにその晩でした。
ヒルトンホテルのルーフバーカウンターに陣取り、ボスポラスの夜景を眺めながらスコッチのグラスを傾ける一時の至福。 イスタンブールでの珍道中の締めくくりは何時もここにありました。
≪著者プロフィール≫
山下和行 (スズキカナダ)
1987年スズキ株式会社入社。 2001年4月スズキカナダ社に駐在。 妻と二人の息子の4人家族。 趣味はロジャースセンターの最上席にて野球を肴にビールを飲むこと。 但し、肝臓の不調により現在減酒中。
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