
Who's
Who Canada−著名カナダ人を知ろう
マジック・ジョンソンの後を継ぐ、NBAのスーパースター
スティーブ・ナッシュ(Steve Nash)
フリーランスライター 三藤あゆみ
何年ものあいだ彼のトレードマークだった"モップヘア"と愛称がついた長髪から、いきなり坊主頭に変身して、ここのところスポーツニュースを騒がせているスティーブ・ナッシュ。
彼は、プロバスケットボールNBAのスーパースター、出身地ブリティッシュ・コロンビア州ビクトリアの誇るカナダ人選手だ。トロントなどでも若者たちが、NASHの名前が背中に入ったフェニックス・サンズのチームユニフォームを着ているのをよく見かける。ポイントガード(ポジション)としては、かの有名なマジック・ジョンソン以来となるNBA史上2人目の、2年連続シーズンMVP獲得という功績をおさめているだけあって、ナッシュ選手は日本のNBAファンの間でも人気だ。
2005-2006シーズンもまた、素晴らしい成績を残し(1試合平均18.8得点、アシスト10.5、スリーポイントシュート成功率43.9%)、チームのパシフィック・ディビジョン優勝に大貢献した。また、2年連続のアシスト王でもある。
スティーブ・ナッシュは、1974年に南アフリカのヨハネスブルグで生まれたが、2歳の誕生日を迎える前に両親とともにカナダに移住してきた。プロサッカー選手だった父親は、当時まだ人種隔離政策アパルトヘイトが実施されていた南アフリカの社会で子どもを育てるのはよくないと考え、祖国を後にすることを決心した。母親のほうも自分の息子が、「この人たちは人間的に劣る」とか「遺伝的に身分が低い」とかいう価値観を植えつけられて育つのは許せないと思ったそうだ。
ナッシュ選手にはきょうだいが2人いるが、弟はサッカーのカナダ代表、妹のほうもビクトリア大学でサッカー女子チームのキャプテンをしていたことがあり、ナッシュ家はスポーツ一家である。ナッシュ選手も小さいころからサッカーに親しんでいたが、わりと早い時期にサッカーよりもバスケットボールのほうに熱中するようになったそうだ。彼は、高校バスケのうちから群を抜いてうまい選手だったというが、本場アメリカから声がかかったのは、当時の監督による地道なアピールのおかげだったそうだ。リバウンド、ゴール数、アシストのすべてが高得点だったナッシュ選手は、アメリカのカレッジバスケット上位チームで十分通用する実力があった。それにもかかわらず、どこの大学も白人のカナダ人選手に注目しないので、しびれをきらした監督が、NBA選手のタマゴたちが育つアメリカの大学30校ぜんぶに「ここにすごい選手がいるからぜひ見に着てください」という手紙を書いたというエピソードがある。
ところで、ナッシュ選手がカナダでたいへん人気のある理由は、カナダ出身のスーパースタープレイヤーだからというだけではない。皆がかっこいいと思う理由は、彼の「謙虚さと生真面目さ」なのだそうだ。NBAスーパースターの多くは、ハリウッドスター的な贅沢をしたり(チームやコマーシャルの契約金がすごい額なので不思議はないが)、派手な言動でマスコミの注目を集める。しかし、ナッシュ選手はいたって地味である。もちろんテレビに出演したりはするが、スター気取りの行動は一切なくスポーツ精神に徹しているというので有名だ。この夏も、地元の若いバスケット選手たちのトレーニングに貢献しながら過ごしている。当然、メディアに対してあまり愛想もないのだが、それがウケルというのがカナダらしいところである。
ところで彼が頭をまるめた理由は、心機一転かと思えば、「特にないです。なんとなく切りたいなと思って・・・」というわけだそうだ。
≪著者プロフィール≫
三藤あゆみ
フリーランスライター/翻訳家、映像プロダクション通訳。日本の高校卒業後イギリスへ渡り、後にトロントに移住。埼玉県生まれ。
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