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ミニシリーズ ミニシリーズ第3弾 ![]() 角田 令子
皆様、はじめまして。わたくし角田令子と申します。 今回光栄にもこのような場をあたえていただき何を書こうかと考えましたが・・・私の仕事について少し紹介させていただき、また私が日頃心がけていることをお話することにしました。皆様が料理を作るときのヒントになればと思います。 私は料理を作ることを職業としています。いわゆるコック“ザ・料理人”です。シェフと呼んでくださる方もいますが、自分としてはコックのほうがしっくりきます。げんに料理人の間では「あなたはいいシェフだね」と言われるよりも「いいコックだね」といわれるほうがうれしいという人が多いのです。なぜならシェフというのは料理そのものよりも、デスクワークや人間関係を重視することが多いからです。げんに私の職場であったエアーカナダセンターのエグゼクティブシェフは包丁をまったく握りません。彼のおもな仕事はミーティングと問題処理です。実際に料理を作るのは我々コックであり、「GOOD COOK」というのは純粋に料理の腕前をさすからです。 ニューヨークのプロ専門料理学校を卒業し、マンハッタンのレストランで一年修行し、トロントに移ってからはエアーカナダセンターで6年働きました。皆様もご存知のとおり、エアーカナダセンターではバスケットとアイスホッケーのゲームが行われます。私は三つあるレストランのうちの一つで料理を作っているのですが、なにしろここほど忙しいレストランはトロント中探してもないと思います。特にプレイオフのピーク時には500人以上のお客様を2時間でサーブしなければならないのですから、キッチンはもう修羅場です。 私のいたキッチンでは11人のコックが働いていました。キッチンはグリルステーション、ベジタブルステーション、パスタステーション、フライステーション、アペタイザーステーションに分かれ、私はアペタイザーステーションの責任者でした。私の下には4人のアペレンティス(見習い)がいて、私の指導のもと仕事をします。サービスが始まると私はステーションの前に立ちオーダーを読み上げ、迅速に注文された料理をだすために指揮をとるのですが、忙しくなってくるとオーダー票がたまりはじめ私の声も張り上がってきます。そんな時に料理を間違えたり面倒な注文がきたりすると私の頭は真っ白になります。そんな時は気を落ち着かせるために深呼吸して頭を冷やそうとするのですが、私もまだまだ人間的に未熟なもので眼をつりあげ、アペレンティスや無理難題をおしつけるウエイターを怒鳴りつけたことも何回かあります。日本の女性はおとなしくてしとやかという欧米人の方々の幻想を私が打ち砕いたのではないでしょうか。 サービスがスムースに運び、なんの問題もおこらなかったときはみんなでハイファイブをして喜びあいます。そんな時に一体感が生まれ結束が強まるのです。わたしはこの職場でプライベートでも付き合える友達が何人もできました。 ここで私が学んだことは、忙しい時ほどパニックにならずに落ち着いて行動することと、ふいの問題にうまく対処できる柔軟性(FLEXIBILITY)です。そのためには段取り(ORGANIZATION)をうまく行い、計画をきちんとたてることがとても大切なのです。どれだけ細く千切りできるか、あるいは何種類のソースを作れるかなど料理のテクニックを磨くことも重要ですが、それだけではいい料理人とはいえません。特に上に立つものほど料理以外のスキルが必要になってきます。例えば下の者をまとめる統率力や、部下一人一人の能力を見極め指導して行く力です。 私には料理の師と仰ぐシェフが一人いますが、彼は料理の腕はもちろん、下の者に接する態度を見ていてとても参考になります。偉いからといって決しておごらず、みんなに平等に接し、任せられるところは下の者に任せ口をださない。私もこうなりたいと思っているのですがどうも感情が邪魔をしてうまくいきません。まだまだ修行がたりないようです。また料理人は肉体労働ですから、体力を備えるために私は毎週3回ジムに通っています。 ホームパーティーでもフォーマルな食事の段取りは同じ 現在私はスコシアバンクのダイニングルームで働いているのですが、エアーカナダセンターでの経験がとても役にたっています。キングストリートにあるスコシアプラザの63階にエグゼグテブ専用の六つのダイニングルームがあり、私はそこで出される料理の責任者です。というのも、キッチンには私一人しかいないのですから。ですからちゃんと計画をたてないと料理を時間通りにだすことができなくなります。 皆さんは自宅で5人から10人ほどのお友達や、お客様を招いてフォ−マルなパーティを開かれる時どうされますか?まずなにから作り始めますか?今の私の仕事は家で開くホームパーティでお客様をもてなすのとなんの代わりもありません。これから私の料理を作るうえでの準備と流れを説明しますが、皆さんがパーティを開かれる時の参考になれば幸いです。 献立ですが、アペタイザーは野菜スープとサラダ、メインはサーモンのソテーに付け合せとして旬の野菜とローストしたミニポテトをだすことにします。 まず、最初にだすアペタイザーから作り始めますが、スープとサラダに使う野菜を切る時に一緒に付け合せの野菜も切っておきます。同時に、コンロにお湯を沸かしておくのを忘れずに。スープは時間がかかるので、はじめに準備して火にかけます。お湯が沸いたら、切っておいたメイン用の野菜をボイルして氷水にとります(野菜の色を鮮やかにするため)。 スープが出来るまでの間、サラダのドレッシングを作り冷蔵庫に入れます。どんなサラダを作るにしろ必要な材料はすべて用意して別々に準備しておくことが大切です。(例えばグリークサラダの場合、オリーブ、フェタチーズ、トマト、ロメインレタス、 きゅうり、赤ピーマンを切って分けて冷やしておく) そのあとポテトをオーブンに入れローストし、サーモンをフライパンでソテーし表面に焼き色をつけます。サーモンは、最後はオーブンで仕上げるので中まで火を通す必要はありません。 次にサーモンに合うソースを作ります。冷たいソースなら冷蔵庫に、暖かいソースならHeat Proofの器に入れお湯を沸かした(熱湯ではない)鍋の中に半分沈め保温しておきます(ソースの中に水が入らないよう気をつけて下さい)。 さてこれで準備はできました。後はお客様の到着を待つだけです。お客様が席に着かれたら、まずオーブンを350度に加熱しながら、スープを温め直します。サラダの材料をすべてボールに入れ、ドレッシングであえます。お皿に盛り付け出したあと、すぐサーモンとポテトをオーブンに入れます。スープがサーブされている間にメインを仕上げにかかるのです。野菜をバターで軽くソテーしてお皿に盛り、ポテトとサーモンをのせソースをかけてできあがりです。 このように段取りを順序だてて行うとお客様を待たせることなく、冷たい料理は冷たく、温かい料理は温かく出すことができるのです。 スコシアバンクでは少ない日は一組(2名)、また多い時には4つのグループ(総勢40名)に対して一人でサーブします。ですから私が仕事場で最初にすることは、その日のメニューを見ながら頭の中で手順をたてることです。料理をだすまでの流れをいかにスムースに運ぶか、それが今の私にとって一番の課題です。ただいつもうまく行くとは限りません。肉を焼く時間を間違えたり、付け合せの野菜を忘れたりと失敗もあります。ですが、失敗するからこそチャレンジ精神がわき、おもしろいのだと思います。 料理人にとって何が一番うれしいかというと、出した料理がお客様によってきれいにたいらげられ、お皿が空になって戻ってきたときです。先日、60人程のランチパーティを手がけたのですが、このときはほとんどの料理が空になり、何人のお客様から直接お礼の言葉を頂きました。大変でしたが、がんばったかいがありました。その反面料理が残されてかえってくると、何がいけなかったのか考え原因を突き止めます。そして、その経験を次の機会に役立てるのです。 私はスコシアで働きはじめてまだ半年ですが、ここのお客様はお年を召した方が多くあまり油っぽい料理や塩辛いものは好まれないようです。それにとてもコンサーバティブだということなのですが、なにせ私は東洋人。料理人の意地にかけて、少しずつでもアジア的なフレーバーをとりいれて、お客様の味覚改革ができれば、と密かに計画しています。 これからも毎日、すべてのお客様を満足させることが出来るようがんばるつもりです。「ザ・料理人」は日々勉強、日々精進です。
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