リレー随筆

 

日本人NHL選手の作り方!?


キャノンカナダ 高橋紀行



顔をひんやり覆う冷気と独特なゴムの匂い。そして耳を突く鋭いパックの音。アイスホッケーの行われるアイスアリーナには常にそうした独特の空気感が漂い、しばし我々を非日常な世界へと導いてくれるものです。このコラムをご覧になられる方の中にも、カナダで初めてアイスホッケーの魅力に触れられた経験をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。

大学時代以降、縁あって私はこれまで多くの時間をアイスホッケーに費やして来ましたが、カナダで最も多く友人から受ける質問の1つが「日本人NHLプレーヤー誕生の可能性」について。毎度真面目に返答する一方、多分にこれは質問なんかではなく、殆どの友人が半ば私を揶揄しているのを感じずには居られませんが・・・。今回、この問いに対する勝手な私の思いを書いてみたいと思います。

1、タフネス 言わずもがな、これはどんなスポーツにも言える事ですが、一流のスポーツ選手はフィジカルな強さは当然のこと、メンタル面でも驚くほどのタフさを持ち合わせています。氷上を走り回るアイスホッケーでは1試合あたりの各個人の競技時間は意外なほど短く、プレーするシフト毎に最高のパフォーマンスを発揮出来るよう常に高いレベルで自らをコントロールする必要があります。これら精神面の強さを育む背景は個々様々でしょうが、北米ではNHLプレーヤーになって活躍するという明確な目標をイメージし易いこと(明確で強い目的意識)、そしてその登竜門となる質の高いジュニアリーグの存在(厳しい競争環境)が多大に影響している様に思われます。この点に関し、日本におけるアイスホッケー環境と北米のそれとでは、残念ながら天地の差が存在します。

2、タレント 優れたプロスポーツ選手の条件として、人並外れた努力もさることながら、生来授かったスポーツ選手としての資質も必要なのは良く知られたことです。そうした運動選手として資質の高い個人が、北米では幸運にも競技としてのアイスホッケーを選択する可能性が高い事情があります。仮にヤンキースの松井選手や砲丸投げの室伏選手がアイスホッケー選手であったならば、興味深いものです。

一般に日本人のサイズ的劣勢を引き、日本人選手がNHLで活躍するのが困難とする論評を目にしますが、私はそうは思いません。活躍するNHLプレーヤーが常に身長2メートルを超える体格の持ち主であるはずもありません。先に触れた2つの条件が整い、その上で日本人選手が得意とする優れたスケーティング技術とスピード、チーム戦術への深い理解と応用力を備えれば、日本人NHLプレーヤーの誕生も決して夢物語でないと思います。いつかその日が来ることを期待したいものです。

先日、いつものごとくCBCでリーフス戦を観ながら、ブツブツ独り言のようにこのコラムへの内容について話をしていたところ、それまで隣で話を聞いていた妻がポツリ一言。 「ねえ、ホッケー選手ってヤンキースの松井君みたいに稼げるの?」

そういうことだったのか・・・。 恐るべき主婦の視点。根本的には、日本のみならず世界市場でのホッケービジネスの一層の拡大が必要なのか!?



次号はNSKカナダ社・岩本様にご登場をお願いしております。


≪著者プロフィール≫
高橋紀行
栃木県日光市生まれ。99年キヤノン株式会社入社後、営業担当を経て、04年トロントへ赴任。現在、放送/映画用レンズ販売に従事。趣味は異質なものに触れること。妻との2人家族。



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