
私のとっておきの店
迷える子羊
子羊肉の最高峰「プレサレ(L'agneau de pre sale)」 が入手できる肉屋
服部誠市
Cumbrae Butchers
481 Church St
Toronto, ON, M4Y 2C6
Telephone (416) 923-5600
「羊 は国家レベルで米国から日本に輸入され、育成され、そして見捨てられた。それが羊だ。可哀そうな動物だと思わないか?」とは、村上春樹の『羊をめぐる冒険』の中の一節ですが、私にとっては可哀想というより立春あたりから肉屋の軒先に並ぶ地元産の子羊は垂涎の的です。
ところで、一般に羊の肉は、生後1才未満をラム、2才未満をホゲット、それ以上はマトンと呼ばれています。羊料理の歴史の長いフランスでは、ラムはさらに、生後1ケ月以内の母乳しか飲んでいないアニョー・ド・レ(乳飲み子羊) 100日以内のアニョー・ブラン、6〜9ヶ月までのアニョー・グリの3つに細分され、ヨーロッパでは古くから最も高級な食肉として重用されてきました。
なかでも美食家垂涎の子羊の最高峰が「プレサレ(L'agneau de pre sale)」。プレ(牧場)サレ(塩味)と呼ばれるのは、フランスブルターニュ地方の海に面したなだらかな牧場で、潮風をうけ、潮の満ち干きにより地面が海に沈む期間が長いために海藻のように塩味を含んだ牧草を食んで育つから。生後四、五ヶ月の子羊をいい、品質の高さは格別です。
このプレサレがトロントで入手できる肉屋を見つけたときは思わず小躍りしてしまいました。
この肉屋はChurch St にあるCumbrae Butchersというお店です。ここのプレサレはフランス産ではなくケベック州のセントローレンス川河口に位置し地形的に遠浅のフランスブルターニュ地方に似ているl'ile Verte産です。
このプレサレの背肉のローストを美しいロゼに焼き上げる。口に含むとほとばしる肉汁と驚くほどの柔らかさ、ほのかに香る潮の香り。少量の塩とマスタードがあればいくらでも食べられます。
以前、娘と春先に田園をドライブ中、牧場にさしかかかり子羊の群れに遭遇。娘いわく「かわいい!!」。しかし、心ならずも私の口から出た言葉は、「おいしそう!!」。
美食とはなんと罪深く残酷なことでしょう…。
注: プレサレはケベックからの取り寄せになるため1-2週間の事前予約が必ず必要です。
≪著者プロフィール≫
服部誠市
キヤノンカナダ勤務。
UK15年、カナダへ来てほぼ4年の出稼ぎ歴19年。
家族構成は妻と子供2人。
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