
リレー随筆
大きく方向転換をしているかもしれないアメリカ。そして、その時、日本は?
Mizuho Corporate Bank (Canada) 若林 幹央
「アジア統一通貨構想が具体化。20xx年春、まずは日本円、中国人民元、韓国ウォンが統合か?」といった記事が新聞の一面を飾る日は来るのでしょうか?
今回リレー随筆執筆の機会を頂きましたので、想像を大きく膨らませて、日頃漠然と考えていることを書いてみたいと思います。
話は、アジア通貨とは関係無いところからスタートしますが...。
現在アメリカは紛れも無い超大国です。軍事、経済、あらゆる面で第二次世界大戦後の世界を牽引してきました。「世界唯一の超大国」、「世界の警察国家」を指向、維持するという強いベクトルを持った国だと思います。が、1990年代半ば頃に始まり、最近のアメリカは少し違った動きをしているように感じています。近年、政権内で少し違ったベクトルを持つ勢力が力を増しつつあるのではないでしょうか。
旧来の勢力を「唯一超大国派」、そして、昨今力をつけ始めている(と推測される)勢力を「覇権分散派」として呼びたいと思います。
「アメリカは軍産複合体社会」という言葉をよく耳にします。つまり、軍事産業という基盤を活かしながら、それを経済活動の源泉としつつ、ひいてはそれが政権の安定に寄与するという構造のことを言っていると思います。ここでは、経済を刺激し、政権を維持するためには、ある程度の「軍事的な緊張状態」を維持することがアメリカの国益であるとの判断が働くと思います。アメリカが、「世界唯一の超大国」であり、かつ、世界各地の紛争に介入するという「警察国家」的な動きをすることが要求されます。
これが、「唯一超大国派」の勢力が持つアメリカの理想像だと思います。少なくとも、第二次世界大戦後から近年に至るまで、共和党であれ民主党であれ、アメリカの政権内ではこうした勢力が力を持っていたのではないでしょうか。
が、最近のアメリカはどうでしょうか。アメリカ政府が打ち出す政策は、その多くが裏目に出ているように映ります。イラク戦争、イラン核問題等、まるでそれを期待していたかのように、逆効果をもたらしていると言えないでしょうか。アメリカの“威信”が衰退しているように思います。
北朝鮮に関連する6カ国協議について言えば、主導権を極力中国に握らせようと誘導しているように映ります。アメリカの“威信”を低下させるような“策”を自身の手で練っているのでしょうか。
世界的な米軍の再編も、もしかしたら、“威信衰退”策の一環なのかもしれません。
財政赤字と経常赤字が増えるなか、「超大国」、「警察国家」であることに限界を感じ、アメリカは自らその座を下りようとしているかのようです。アメリカの政権内で、同国が超大国であることを否定する勢力が増えているのかもしれません。こうした勢力は、従来アメリカに集中していた覇権を世界各地に除々に分散させて、アメリカをスリム化させることを考えているのではないでしょうか。
この勢力(覇権分散派)は、1993年に1つの大きな仕事をしたと思います。欧州連合(European Union)の創設です。正確には、欧州が統合して力を持つことを黙認、いや、推奨したと表現した方が良いかもしれません。更には後年、域内の通貨統合も実現しています。
この通貨統合が意味するところは非常に大きいと思います。長年米国ドルが世界の機軸通貨でしたが、それに肩を並び得る力を持つ通貨(=ユーロ)が出現したのです。現在、ユーロは起債のマーケットでも主要な地位を占めるまでになっており、また、資源等のコモディティでも一部ユーロ建てで取り引きされ始めたものもあるようです。既にユーロが基軸通貨の一端を担い始めているわけです。
各国の外貨準備が、米国ドルからユーロにシフトする余地が急速に拡大していると言えます。
つまり、欧州連合の創設は、「覇権分散派」が、「頼られるアメリカ」の権限を一部欧州に移譲することに成功した瞬間だったのではないでしょうか。
アメリカは、欧州連合の中核国であるドイツとフランスを、欧州地域の盟主として選んだのかもしれません。同域内の「警察」としての機能、権限を除々に両国に持たせる(=アメリカから移譲する)ことに成功しているかのように思えます。そしてイギリスは、域内の盟主というよりも、アメリカと欧州連合の「橋渡し役」、「調整役」になるという狙いがあるのかもしれません。
さて、ここで冒頭の句に戻りますが、アジア地域はどうでしょうか?
上海協力機構や、6カ国協議(を中国がリードすること)についてアメリカの真の狙いは分かりません。が、少なくとも表面的に見えている事象だけをつなぎ合わせていくと、アメリカはアジアにおいてもその影響力の減退を企図しているのではないかと疑いたくなります。
アメリカが、欧州連合のような組織をアジアに求める(=認める)かどうかは分かりません。が、欧州連合よりもソフトな形での統合なら可能性はあると思います。また、冒頭書き出しのような通貨統合もいつの日か現実のものとなるかもしれません。
世界の勢力地図が大きく変わっていくかもしれない環境下、日本と中国はアジア地域の中でどういう役割を担っていくのでしょうか。
誰がアジア地域の盟主になり、誰がアメリカとの「橋渡し役」になるのか、これは非常に注目すべきことだと思います。
稚拙で偏った意見を最後までお読み頂き、ありがとうございました。本来はカナダを含む北米地域についても触れてみたかったのですが、それはまたの機会があればということで、今回は失礼致します。
次号は、カナダ三井住友銀行の田中さんに執筆をお願いしております。
≪著者プロフィール≫
若林 幹央(みきお)
京都府出身。海外生活は、ロサンゼルスとトロント。1996年、旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入社。トロント赴任は2002年12月。昔からの趣味は、スキーとバイオリン。最近は、デジカメに大変凝っている。
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