
リレー随筆
カナダの「旬」を訪ねる小さな旅のアイディア
田中 徹志(カナダ三井住友銀行)
「今度トロントに行くのだけれど、ナイアガラの滝の他に何か見るところはあるの?」駐在員としてトロントに来て4年経ちますが、この簡単な質問に未だに上手に答えることができません。温泉や名所旧跡が密集している日本と比べると、人口密度のみならず「観光地密度」もまた、低いように思います。
もっとも、長く厳しい冬のせいでしょうか、日本以上に季節を感じる出会いはいろいろとあることがわかりました。それも、わざわざ遠くに行かなくても、意外に身近なところに、そんな出会いはあるのです。
問題は、「旬」の時期が大変短い(「瞬」という字の方がふさわしいくらいあっという間のものもあります)のと、商売っ気がなくガイドブックなどにもあまり載っていないことです。
時期がずれて空振りすることもありますが、折角トロントに住んでいるのですから、騙されたつもりで、カナダの「旬」めぐりをされてみてはいかがでしょうか。決して期待を膨らませ過ぎないことをお勧めしますが・・・。
僭越ではありますが、私の経験から、いくつかの小さな「旬」を訪ねる旅を紹介させて頂きたいと思います。参考までにトロントダウンタウンからの車でのおおよその所要時間やわかる範囲での連絡先なども入れておきます。
<春の小さな旅: 芽吹き・光>
メープルシロップの農園(トロントから約2時間)
トラクターが引く荷車に乗れば田舎気分いっぱいです。カエデの林に入ると、素朴な地元の子供たちが昔の人の生活やメープルシロップの作り方を説明してくれます。雪の上で水飴状のメープルシロップを割箸に巻いて舐めた時の濃厚な味と、木々の間から差し込む春の光に旬を感じました。
(White Meadows Farms, 905-682-0642, St. Catharines, Ontario, www.whitemeadowsfarms.com )
アスパラガス狩り(45分)
アスパラガスが大地から芽を吹く季節です。入り口でナイフを借りて畑に向かいます。雑草のように見える草を良く見ると、何とアスパラガスです。好きなサイズのアスパラガスを必要なだけ取って、最後にお金を払います。茹でたアスパラガスを口の中に含んだ時に漂う香りに旬を感じました。
(Andrews Scenic Acres 905-878-5807, Milton, Ontario www.AndrewsScenicAcres.com )
いちご狩り(30分)
いちごの季節になれば、夏はもう間近。ハウスものではなく、露地もののいちご狩りができるのです。割り当てられた場所で気に入ったいちごを必要なだけ取って、最後にお金を払います。赤黒い苺の、旬の甘さを楽しんで下さい。
(Whittamores Berry Farm 905-294-3275, Markham, Ontario www.whittamoresfarm.com )
<夏の小さな旅: 太陽・躍動>
メジャーリーグ観戦(10分)
週末のヤンキース戦を除けば、概して空いています。自動車で行ってもすぐ近くの駐車場に車を止めることができることが多く、とても手軽です。天気の良い日にレフト側に座れば、CNタワーの眺めがとても素晴らしいです。さわやかな旬の風をからだいっぱいに感じて下さい(風の強い日は暖かい服装でどうぞ)。
さくらんぼ狩り(1時間30分)
夏の強い日差しの下、麦わら帽子を持ってさくらんぼ狩りは如何でしょう。大きな粒のチェリーがたわわに、実っています。旬の甘酸っぱさを楽しんで下さい。シーズンが極端に短いのと、この時期は午後になるとナイアガラ方面が渋滞することに注意して下さい。
(Cherry Avenue Farms, 905-562-5481, Beamsville, Ontario, www.cherryavenuefarms.org )
カナダデーを首都オタワで祝う(4時間30分)
国会議事堂のすぐ横(北東側)で花火が上がります。国会の敷地で花火なんて、まあ何と平和な国なのでしょう。普段は静かなオタワですが、この時期はホテル、駐車場ともかなり込み合いますので、事前の情報収集が大切です。愛国心いっぱいの旬の熱気を感じて下さい。
(http://www.canadascapital.gc.ca )
近場でカナダの自然を楽しむ(45分)
カナディアンロッキーに行けない夏はロックウッドコンサベーションエリアにどうぞ。是非、カヌーをレンタルして下さい。島と島の間をすり抜けたり、無人島に上陸したりと、童心に返って遊ぶ楽しみがあります。旬の水のやわらかさを感じて下さい。
(Rockwood Conservation Area, 519-856-9543, Rockwood, Ontario, http://www.grandriver.ca/index/document.cfm?Sec=27&Sub1=130&Sub2=0 )
ホエールウォッチング(10時間)
少し遠いですが、ホエールウォッチングも行く価値はあると思います。ここはセントローレンス川の下流付近ですが、潮の影響で成分的には海と同じだそうで、世界的に有数の鯨の生息地だそうです。運が良ければ、ザトウクジラが潮を吹く旬の音を聞くことができます(夏でも寒いので暖かい服装でどうぞ)。
(AML Cruises, Riviere-du-Loup, Quebec, 1-800-563-4643, www.croisieresaml.com )
<秋の小さな旅: 実り・もののあはれ>
りんご狩り(45分)
8月から10月頃までが、りんごの収穫期です。最も人気のあるのは、9月後半から10月前半頃ですが、この時期は天気があまり良くなく混み合うことも多いので、暖かく天気の良い日があれば早めに行っておくことをお勧めします。採れたての秋の旬の味覚を楽しんで下さい。
( Chudleigh’s Apple Farm, 905-878-2725, Milton, Ontario, www.chudleighs.com )
鮭の川上りを見る(15分)
時期と場所がとても大切です。ミシサガ市のミシサガロードとエグリントンアベニューウエストの交差点近くのバーバータウンロードとクレジットリバーが交差している橋の辺り等がスポット(『日加タイムス』等の新聞で、時々採り上げられることがありますので参照ください)になっています。黒い種類の鮭が自分の子供達の為にと自分に鞭打って、われ先にと川を上る時の激しく淋しげな旬の音を感じて下さい。
紅葉狩り(30分)
是非ストリートカー・ミュージアム(30分)を訪ねてみて下さい。古いストリートカーが、動態保存されている小さな博物館です。古いストリートカーに乗ってのんびりと旬の色彩を楽しんで下さい。
(Streetcar Museum, 519-856-9802, Milton, www.hcry.org )
<冬の小さな旅: 雪・澄んだ空気>
ホテルから眺めるナイアガラの滝(2時間)
十分日帰りで行けるナイアガラの滝ですが、この時期には値段も少し下がっているので、温泉の素(入浴剤)を持って、エンバシースイートホテルやフォールズビュー・マリオットホテルなどの大きなジャクジーバス付きの部屋に泊まってみて下さい。
低層階の部屋の方が滝の迫力があるかもしれません。天気の良い日には、カナダ滝の向こうに素晴らしい日の出を拝むことができます。滝を外で見るには寒い時期ですが、ホテルの部屋からなら、一日のうちにさまざまに変わる滝の姿を存分に楽しむことができます。アメリカ滝が見える部屋に泊まれば、花火大会のある日(花火やライトアップのスケジュールは事前にスケジュールを確認することをお勧めします)には部屋から花火も楽しめます。
世界を代表する滝を見ながら、擬似温泉で旬の暖かさを感じて下さい。私は滝から上る水煙が湯けむりに見えました。
( http://www.embassysuitesniagara.com/default.html ほか )
アイススケート(5分から30分)
カナディアンタイアなどでスケート靴を買って、近くのスケートリンクに出かけましょう。室内のスケートリンクは時間の制限はあるものの、天候に左右されずに運動できるのが魅力です。一方、屋外のスケートリンクなら、写真撮影が自由にできるなどの魅力があります。旬のスポーツを体感して下さい。
(The Rink, 416-973-4093, Toronto, www.harbourfront.on.ca ほか)
世界一長い自然のスケートリンク(4時間30分)
スケートにはまったら、是非、足を伸ばしてオタワまで。リドー運河は片道7キロメートルの世界最長のスケートリンクです。自然のリンクなので、氷の厚さが十分にならないとオープンしません。ウェブサイトで、スケートリンクの状況(氷の厚さ等がわかります)を事前にご確認下さい。旬の冷たい風を身体いっぱいに受けながら、完走を目指しましょう。
( http://www.canadascapital.gc.ca )
氷でできたホテル(8時間:ケベック市から車で西に30分)
真冬のケベックには「氷のホテル」があります。入場料を払えば宿泊しなくても見学ができます。壁や天井だけでなく、椅子やテーブル、彫刻、チャペルまで、すべて氷でできています。バーでは、氷のグラスでジュースやカクテルをサーブしてくれます(有料)。是非、透明感のある旬の寒さと美しさを味わって下さい。
(Hotel de Glace, 1-418-875-4522, www.icehotel-canada.com )
<番外編(あまり、「旬」に関係ないものもあります)>
その1:
お正月にトロント発成田行きの飛行機に乗る機会があったら、是非、太陽の動きに注意してみて下さい。私の間違いでなければ一旦太陽が西の空に沈んだ後、再び西の空から太陽が昇ります。西から太陽が昇るなんて、タイムマシンに乗っているようです。
その2:
5月頃の春の雪解けの時、アルゴンキン州立公園(3時間)の60号線沿いを車で行くと道沿いに塩を舐めに来ているムースを見ることができるそうです。私は時期はずれの7月に行ってメスのムースを一頭見たことがありますが、今年はシーズン中に行ってみたいと思っています。
http://www.algonquinpark.on.ca/geninfo/spring.html
その3:
プリンスエドワード島に車で行くのであれば、途中のニューブランズウィック州のモンクトンという町の郊外にあるマグネティック・ヒル(2日と半日)にも是非立ち寄ってみて下さい。目の錯覚でボールやニュートラルのギアに入れた自動車が勝手に坂を上っていくように見えるのです(とっても小さい場所なので、あまり期待をしないで行って下さい)。
http://www.magnetichill.com/
その4:
石油も旬の話題ですね。ところで、北米で始めての原油の商業生産が開始されたのは、石油の街ヒューストンではなく、オンタリオ州南西部の地域(4時間)なのです。昔は一獲千金を目指して多くの人がこの地に集まったそうです。
今でも、小さな油田がいくつか残っており、コトコトと静かな音を立てながら動いています。個人的には感動しましたが、家族の評判は今ひとつでしたので、あまり期待をせずに行って下さい。博物館の中よりも建物の外の方が見る価値はあるかもしれません。
(The Oil Museum of Canada, Kelly Road, R.R. No.2, Oil Springs, Ontario, Canada, N0N 1P0 )
以上、取りとめもなく書いてしまい、失礼致しました。
きっと、私よりも、もっともっと素晴らしい「小さな旅」をご存知の方はたくさんいらっしゃると思います。それでも、多少なりとも皆様にとってカナダ生活を楽しむ一助となれば幸いです。
できる限り情報は正確に記載したつもりですが、もし間違いなどありましたら悪しからずお許し下さい。くれぐれも事前に最新の情報をよく確認されることをお勧め致します。
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