Who's Who Canada−著名カナダ人を知ろう



前衛アートに実験映画、
イートンセンターの雁からスカイドームの彫刻まで


マイケル・スノウ(Michael Snow)
1928‐





フリーランスライター 三藤あゆみ


先月号は、カナダ現代美術の母と呼ばれる故エミリー・カーを紹介しましたが、今も健在の著名なカナダ人芸術家といえば、マイケル・スノウです。

彼が若い頃、ニューヨークで制作したアンダーグラウンド系の実験映画『Wavelength』が国際的に有名になったため、日本などではアメリカ人と思われていることが多いのですが、スノウは、生まれも育ちもトロントの生粋カナダ人です。

スノウの『Wavelength (波長)』は、映画史を勉強すると60年代北米のアンダーグラウンド映画の代表として必ずといってもいいほど取り上げられます。ニューヨークのソーホーにあるアパートの部屋の壁に向かってカメラがただひたすらズームインし続けてゆく45分間の不思議な作品です(日本の実験映画は寺山修司監督の作品が海外でも有名)。

マイケル・スノウは様々な媒体を使って表現する多才なアーティストで、ジャズミュージシャンや写真家、彫刻家としても知られています。

トロントに住む皆さんの一番多くが目にしたことのある作品は、スカイドーム(ロジャースセンター)の北西外壁にある、ユーモアたっぷりの彫刻「オーディエンス」や、イートンセンタービル内の吹き抜けスペースにディスプレイされている空飛ぶカナダ雁のレプリカではないかと思います。

彼の芸術作品は、ニューヨーク近代美術館やパリ近代美術館、オタワのカナダ国立美術館などのコレクションにもなっています。もうずいぶん前になります が、品川の原美術館でマイケル・スノウ展が開催されたこともあります。

今年で78歳のスノウは、トロント市内のローズデールで生まれ育ちました。アッパーカナダカレッジに通っていた高校時代にアート活動に目覚め、賞をとるなど才能を発揮しはじめました。高校卒業後は、オンタリオ・カレッジ・オブ・アート(現在オンタリオ美術大学)でデザインを専攻し、絵画や音楽は自己流で勉強したそうです。

彼の作品が世に知られるようになったのは広告アートの分野においてですが、50年代に、ジャズピアノやトランペットを演奏して旅費を稼ぎながら18ヶ月間ヨーロッパ各地を巡りトロントに戻ってくると、今度はアニメフィルムのスタジオを開き制作活動を開始しました。

スノウの奥さんジョイス・ウィーランドも多才な前衛アーティストでした。彼女は晩年アルツハイマーを患い1998年に亡くなっていますが、生前はスノウとともにさまざまな芸術活動を行っていたようです。60年代から70年代のはじめにかけて、2人はニューヨークのソーホーに住んでいました。スノウを国際的に有名にした絵画シリーズ『Walking Women』や、実験映画『Wavelength』が完成したのもその頃です。

マイケル・スノウの作品の写真集やジャズCD(バンドCCMCやソロ)などは、トロントの書店やミュージックストアでわりと簡単に手にはいりますが、やはりスノウの地元トロントに滞在したら、ぜひスカイドームの「オーディエンス」を見上げてみてください。青空がバックグラウンドの日は写真撮影にも最高です。








≪著者プロフィール≫
三藤あゆみ
フリーランスライター/翻訳家。日本の高校卒業後イギリスへ渡り、後にトロントに移住。トロント大学卒(心理学、東アジア学専攻)。埼玉県生まれ。


 


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