
子供と補習校と私
補習校の子ども達と親はだいじょうぶ?
子どもと肥満

トロント大学
谷口 幹太
皆さま、はじめまして。現在トロント大学バンティングベスト糖尿病センターで研究留学をしております谷口幹太と申します。今回はひょんなことから原稿を依頼されてしまいました。“補習校と子どもと私”という演題で、さて何を書こうかと迷いましたが、せっかく書く機会を与えていただいたので、この場をかりまして私の専門にからめて子どもと肥満についてお話したいと思います。
2週前は小学校の運動会、先週は幼稚園の運動会に参加させて頂きました。はつらつとした子ども達を見て、本当に幸せな気分になったのと同時に、はるか遠い昔の自分の運動会の思い出と重なりとても懐かしい気持ちになりました。全員の子ども達をじっくり観察したわけではないですが、問題となるような肥満のお子様はいらっしゃらなかったように思います。ところがカナダの子ども達は、どうでしょう。日本人の子どもにはあまりみられない、お腹がぽっこり出た子どもが多く見られます。たいていそのような子ども達は、ポテトチップスなどのジャンクフッドを食べていますね。その横にいる親を見ると同じ体形で一緒になってポテトチップスを食べているのがこれまた興味深い。
何が彼らの肥満を作っているのでしょう?一昔前は、肥満は食欲のコントロールのできない意思の弱いお金持ちがなるもの、と少し偏見じみて考えられていましたね。ところが今は科学的にいろいろなことがわかってきています。まだ完全にコンセンサスが得られた話ではないですが、太りやすい体質の原因遺伝子も一部同定されており、食欲に関してもある種の遺伝子やそれによって作られるホルモンによってコントロールされていることがわかってきています。他にも様々な環境因子が影響して肥満が発症することがわかっており、単に意思の強さの問題ではなさそうです。そう考えるとおもしろいですが、少し怖くなりますね。
それはともかくとして肥満は、何が問題なのでしょう?皆さんに真っ先に頭に浮かぶのは、“メタボリックシンドローム”という言葉ではないでしょうか。では、メタボリックシンドロームって何でしょう? その質問に明確に答えられる人は、現時点では誰もいません。少し驚くかもしれませんが、その本質的な病態はわかっていないのです。確かに断片的な説明は、たくさんありますし、その説明を聞くとわかったような錯覚に陥ります(それは恐ろしい錯覚で注意しなくてはなりませんが)。
ただ実態はわかっていないながらも、その診断基準(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/metabo02/kiso/index.html)を満たした方は残念なことに狭心症、心筋梗塞などの心臓病などを発症する確率がべらぼうに高くなるのです。その事実がありながら、放っておく訳にはいけません。確かに日本の診断基準は、それを満たした方が心臓病を発症するという明確な疫学的事実はなく、曖昧さを非難する声も少なくありません。しかしその診断基準を曖昧だといって非難するよりは、その基準を満たさないように適切な体重維持、そのための食事運動習慣の是正に努めたほうが私はいいように思います。肥満は、心臓病、脳卒中に代表される動脈硬化性疾患だけでなく、大腸癌、乳がんなどの癌の発症にも関連することがわかってきています。まさに百害あって一利なしといえるでしょう。
では究極の肥満の治療は何でしょう? 答えは簡単、太らないことです。予防こそ究極の治療です。さらに小児期の肥満は、大人になってからの肥満、さらにはメタボリックシンドロームに発展する可能性が高いことがわかってきております。だから小児に対してもメタボリックシンドロームなんてことがいわれだしたのですね。しかしいうまでもありませんが、逆に小児期に肥満がないからといって成人してからメタボリックシンドロームにならないというわけではありません。
しかし小児期に高度肥満になってしまったお子様は大人になってから肥満是正するのが本当に難しいのです。一説によると脂肪細胞の数は15歳頃までで決るそうです。大人になってから太るというのは単に脂肪細胞が大きくなっているだけだそうです。そう考えると今更ながら小児の適切な体重維持、食習慣や運動習慣は大事という気がしてきませんか? そしてお子様のためにも長生きするために大人たちも食生活、運動習慣について見直してみようではありませんか。
長々と読んで頂きありがとうございました。メタボリックシンドロームに限らず、生活習慣病に関する質問はウエルカムです。ちなみに私は今年の8月で帰国となります。皆様どうかお体に気をつけて、カナダ生活を楽しんでくださいね。
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