
カナダ医療体験談
その3 トロントでの出産
ニコンカナダ株式会社 佐竹 良太
昨年12月に長男が産まれました。
初めての子供をカナダで迎えるにあたって、それまで見聞きしてきた日本での出産とトロントで実際に経験した出産には、幾つかの違いがありました。あくまで我が家の経験談ですが、ご紹介したいと思います。
妊娠が分かったのは、一時帰国中の日本で妻が体調を崩した時でした。実家近くの産科医で検査を受けました。トロントへ戻ると、先ずは病院探しから始めました。それまでの3年間、妻も私も医者要らずで過ごしてきましたので、ファミリードクターさえ決めていませんでした。そこで、先ずは自宅近くのWalk-in Clinicへ行って相談してみることにしました。Walk-inの医師に、日本で既に検査を受け妊娠が分かっていることを伝えると、改めて血液検査をした後、産科医へ予約を入れ、紹介状を作ってくれました。
紹介されたのは、トロントのダウンタウンにあるWomen’s College Hospitalでした。自宅からも比較的近く、後で会社の同僚に聞くと大変に評判の良い病院だということで安心しました。以後、毎月一回、直前は2週間に一回という頻度で検診を受けることになります。日本では産科医が、毎回超音波で胎児の様子を見ながら診察をしてくれるようですが、こちらは診察と超音波検査は全くの分業体制です。超音波検査は産科医が予約を取ってくれ、そちらへ出向いて検査を受け、検査結果は改めて産科医の診察の際にを聞くことになります。レントゲン検査と同じ要領です。ですから、超音波検査の技師に赤ちゃんの性別を尋ねても、「私には答える権限がありません」と言われました。
妻は妊娠中つわりがひどい時期がありました。医師に吐き気に悩まされていることを訴えると、あっさり薬やサプリメントを処方してくれます。日本では、妊娠中のお母さんは風邪を引いても薬を飲まないと聞いていましたので、薬が赤ちゃんに影響しないか少し不安でした。しかし医師に聞いても、薬剤師に聞いても、皆口々に「大丈夫」と言いますので、恐る恐るですが妻も服用する気になり、結果的にはお陰で気分良く過ごすことができるようになりました。
出産予定日を明日に控え、最後の検診に行ったところ、産科医から「今週何も起こらなければ、日曜日に促進剤で出産します」と言われました。実際、予定日になっても全く産まれる兆候はなく、土曜の夜12時を過ぎると、「いよいよ今日か。でも何だか誕生日を人に決められたような気もするな」と、多少複雑な気分でした。
当日は、以前病院で催している両親学級のクラスに参加した時、院内のツアーをしてもらっていたので、自分たちが病院のどこから入り、どこの部屋に行けばよいか分かっていたので慌てずに済みました。妻には相変わらず出産の気配はなかったのですが、医師に破水させられると陣痛が始まりましたので、「あとは、赤ちゃんとの対面を待つばかり…」とドキドキして見守っていると、しばらくして何やら看護師らの動きが慌しくなり、医師が部屋に入ってきました。医師は、「赤ちゃんの心拍数が低下しているので、帝王切開に切り替えます」と言い残して、妻を手術室へ移動させていきました。急な展開で、どうなるのかとハラハラして待ちました。どれだけ時間が経過したのか忘れましたが、やがて遠くから「おぎゃー」という声が聞こえ、看護師が「Beautiful Baby Boy!!」と拍手をしながら歩いてきたのを見て、ほっと力が抜けたのを覚えています。
現在のトロントでは、出産での入院期間は大変短く、自然分娩の場合、第一子は2泊、第二子以降は1泊、帝王切開でも3泊で退院させられます。お腹を切って3日とは短いなと思っていましたら、3日目の朝にはお腹を留めていたホチキスも取られてビックリしました。(ホチキスで留めるということにもビックリしましたが。今では日本でもホチキス留めだそうですね)
退院までに子供の名前を決めておくと、退院時に病院がOHIPの申請をしてくれます。名前が決まっていなくても、OHIPは後日自分達で申請することができます。退院すると、その後48時間以内に小児科医に受診しなくてはいけません。最近は新患を取らない医師が多く、掛かり付けになってくれる小児科医を探すのが中々大変でした。私たちの場合は、病院でリストをもらったり、友人達に紹介してもらったりして、漸く良い方にお願いすることができました。今後出産を控えていらっしゃる方は、早くから小児科医探しをされることをお勧めします。
兎にも角にも、赤ちゃんが元気に産まれてくれるのが何よりです。また、男の私には想像もつきませんでしたが、出産というものが命懸けの事だということも、今回初めて思い知りました。子供が産まれ、妻が無事に手術室から出てきた時の、彼らへの感謝の気持ちは、これからも忘れずにいたいと思っています。
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