子供と補習校と私
海外生活での漢字学習について
カナディアン カワサキ モータース インク
高橋 五朗
私は昨年の4月、トロントに赴任した。子供たちと妻は小学校の1学期が終わる7月末を待ってこちらにやってきた。夏休みの間はサマーキャンプにも行かず、まずはこちらの生活に慣れるために近所のモールや観光地を廻り、9月になり子供達はそれぞれグレード2、5、7として現地校にも補習校にも通う新たな学校生活をスタートした。
最初は周りに日本人はほとんどいなかったので、英語もままならない娘たちはかなり苦労したようであるが、英語なしでは過ごしていけない環境に慣れるしかなく、それがかえって幸いしたのか、しばらくすると英語で友達ともコミュニケーションが取れるようになった。
トロントでの生活も早1年。3人の娘たちは自由な環境の現地校にもすっかり馴染み、特に補習校は、日本語での授業、日本人の友達、先生と会えることもあり、いつも行くのを楽しみにしている。
もともと日本でもよく本は読んでいた娘たちであるが、特に今は日本語の活字が恋しいのか、以前にも増して本を読むようになった。特に長女は小説を読み始めている。以前は少女マンガを何度も何度も飽きずに見ていたのだが、それに飽きたのか、家の書庫から私達夫婦が読み終わった小説文庫本を持ってきて、一週間のうちに読みきってしまうようになってきた。果てには何か読むものはないかと催促されることもある。
中1で恩田陸とか重松清とか読んで楽しいのか??と疑問であるが、長女に聞くと「なんでもいいねん・・・」ということである。いろいろな分野の本を読んでいるが、青春ものがどうやら好きらしい。他の娘達も毎週補習校の図書室から沢山の本を借りて帰ってくる。図書室の本を眺めどれにしようか迷っているときは本当に真剣そのものである。
読書が好きなことはいいことだと思う。登場する人物や場所や設定などを言葉によってさまざまに想像し、楽しむことが出来る。親からするとテレビやインターネットなどを見るよりはるかにお勧めだ。そういう私も昔はよく本を読んでいた。カナダに赴任してから久しく読書をしていないと妻に言うと、日本にいる頃にも本を読んでいる姿を見たことがないと言われてしまったのだが(そんなことは無い・・・と思う。多分)。確かに高校に通っていた頃は、通学電車の中や誰も来ていない教室で毎日のように本を読み耽っていた。
読書は日本語、特に漢字に接する良い機会である。けれども、よく海外に赴任中は漢字の学習が疎かになると聞いていたので、普段の学習と読書だけでは漢字の習得には足りないのでは、と思い始めていた。そう思っていた矢先に、補習校で漢字検定が実施されると聞き、これはいいチャンスとばかりに、申し込みを決めた。最初は渋っていた娘たちであるが、合格したら何か欲しい物を買ってあげると、物で釣って何とか申込をさせた。問題集も図書室で借りてきて、夕食のあと1時間ほどみっちり勉強し受験に備えていた。末の娘は一生懸命覚えるために何度も何度もノートに書き出していた。「虫」と「足」の下の部分がいつも反対になってしまうのである。我々大人も漢字を書くこと自体が少なくなり、今は業務の文章作成やメールでもパソコンが変換してくれるので、選ぶだけで、あまり漢字自体を覚えてなくても良くなったのは困った現象である。
その漢字検定は、読み書きから始まり四字熟語など、低学年向けは筆順までもが出題範囲である。筆順などは、教えたりするときに自分がいつも書いているのが間違っていることに気付いたりする。具体的な出題範囲は、妻の受験した準2級では、読むことと書くこと(熟字訓、当て字を理解すること、対義語、類義語、同音・同訓異字などを理解すること、四字熟語を理解すること、など)、部首の理解を深め、正しく識別する。10級(小学1年程度)では、読むことと書くこと、点画の長短、接し方や交わり方、筆順および総画を理解する、などである。
妻から受験問題を借りてやってみたのであるが、特に分からなかったのが、部首、部首名。これが難問。今まで聞いたこともないようなものまである。例えば、缶は部首は缶(ほとぎ)、おなじみの疑は部首は疋(ひき)、などなど数えればきりがない。また「秦・奏・泰」などの似たような漢字でさえも3つ全部の部首が違い、妻がぶつぶつ文句言いつつ覚えていた。みなさんは答えが分かりますか?
正解は
秦・・・・・禾(のぎ)
奏・・・・・大(だい)
泰・・・・・水(したみず)
試験当日、受付を終え各教室に入っていく娘達を見守りながら、ちゃんとできるか心配した。最後まで文句を言いながら勉強していた次女は、退出可能時間に早々とでてきたのだが、ちゃんとできているのやら・・・。結果はまだ分からないが、皆それなりのいい感じを得ている様子である。漢字を覚えることに興味を持ってもらい、来年は更に上位の級を狙ってもらいたい。
ところで、検定というのは日本人にとってどうやら性に合っているものだと、今更ながら感じている。インターネットで「検定」と検索しても数えきらないくらいの検定がでてきた。面白い検定には「ご当地検定」まである。そういえば私たちが住んでいた兵庫県にも面白い検定があるのを思い出した。その名は「明石タコ検定(おさかな通)」である。明石ダコを中心としたおさかなに関する生態・産業・食文化・歴史など多分野にわたった検定試験である。いわゆるご当地検定といわれているもので、それは地域の歴史や文化、観光を問う検定試験である。ほかにも全国各地の自治体が知恵を絞って検定を作っているようである。本格的なものからゲーム感覚のものまである。
そのうちに、トロント検定なんていうのが出来たりして・・・。ちょっと楽しみかな。
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