リレー随筆

 

春節−中国正月は、花火・爆竹、民族大移動に中国版紅白





  道廣  剛太郎   (カナダ三井住友銀行)



2008年の正月もあっという間に過ぎてしまいましたが、皆様いかがお過ごしですか? 

新聞によれば、昨年カナダへの移民者の出身国は、1位中華人民共和国、2位がインドとなった模様です(2007年CENSUS)。 皆様の職場や地域社会でも中国系の方々が多いのではと思いますが、昨年4月に上海から転勤して来た私が、あまり違和感を感じないのも無理からぬ気がします。そこで今回は、2月号のコラムということもあり、中国暦の正月である春節にまつわる話題を紹介させて頂きます。 

そもそも、暦法とは? 暦に、太陽暦と太陰暦があるのは、皆様ご承知の通り。太陽暦が、地球が太陽の周りを1周する365.24219日を1年とするのに対し、太陰暦は月が地球の周りを1周する29.53039日を1ヶ月とし、1年=12ヶ月=354(355)日とする暦です。 

太陰暦は、1年の長さが1回帰年より短いため、暦が実際の季節とずれていきます。これを解消するため閏月を適宜挿入し調整するのが太陰太陽暦で、チベット、ユダヤ、ギリシャ、ローマ、ヒンドゥーそして中国暦等がこれに該当します。一方、狭義の太陰暦は純粋太陰暦とも言われ、現在も利用されているものとしてはイスラム世界での公式な暦であるヒジュラ暦が有名です。しかし、現在世界各国で用いられているのは太陽暦であるグレゴリオ暦で、日本も1873年に採用しました。 

さて、中国では、太古より太陰暦(中国暦)を基準としていましたが、辛亥革命(1911年)の後、中華民国が成立し太陽暦が採用されました。そして、中華人民共和国設立後の1949年、国家記念日と国民の休日が制定され、その際、中国暦の正月である春節も国民の休日とされた訳です。尚、昨年休日の一部改定があり、今年から清明節や端午節も休日となりました。ちなみに、公式の休日スケジュールは毎年国務院から発表されます。 

春節とは?

春節の由来には諸説ありますが、「その昔猛獣が毎年末になると姿を現し、人を食べる等の悪行を行っていました。これを退治するため、人々が赤い服を着て松明をともし爆竹を鳴らして退治した。その後、この時期に皆で祝福しあうようになった」というのが一番有名な伝説です。
春聯
春聯

そのため、毎年この時期に、紅色の「春聯」(新年に門や玄関・入口の戸に貼るおめでたい対句)や提灯を飾るとともに、花火を打ち上げ、爆竹を打ち鳴らす習慣となったと聞いています。但し、近年、花火や爆竹により火事が発生するやら死者まででる騒ぎとなり、北京・上海等の都市部では規制されていました。しかし、市民からの不満の声が強くなり、2006年年末から一部の地域で解禁となっています。



中国の連休のしくみ

(その1)
国務院は毎年12月に翌年度の休日スケジュールを発表しますが、2006年は23日過ぎ になって、「元旦の休みを2006年12月31日(日)〜2007年1月2日(火)とし、2006年12月30 日(土)は振替出勤日とする」との発表がありました。さて、こうなると銀行は営業せざるを 得ません。幸い現地スタッフの方々は慣れたもので、滞りなく順調に業務を終了しました が、正直言って私にはかなりの驚きでした。
これには後日談があり、23日までに届いていたカレンダーのほとんどに新休日が明記 されており、どうやら何も知らなかったのは、一部の日本人だけというのが真相のようで した。 

(その2)
中国の休日は1週間連続で前後の土日を含めば9連続休暇と、皆様お考えかも知れま せんが、それは大きな間違いなのです。実は、休日は3日間で前後の土日2日間を振 替出勤日としてその振替で7日間連続して休む格好となります。例えば、最初の土曜と 最後の日曜は振替出勤日とし、その振替で週日の2日を休日とし3日間の休日と併せ 5営業日連続の休日とするという具合です。

(例)

出勤


振替休

休日

休日

休日

振替休


出勤



風習・恒例行事

風習としては、@年末のお供え用の餃子包み。山盛りに包み、中には硬貨を入れるものもあるそうです。A紅包(所謂、お年玉)、Bお年賀、C初詣 等は日本と同じですね。但し、初詣は正月4日目に行うとの由。恒例行事としては、@花火・爆竹、A民族大移動、B中国版紅白歌合戦が挙げられます。

@ 花火・爆竹
先ほど若干述べましたが、春節といえば花火・爆竹がつきものです。外灘のライト アップされたビル群を背景に打ち上げられる花火は見事で素晴らしいものですが、市街地の身近でやられる花火・爆竹はまさに火薬の爆発そのものです。

実際に体験された方はよくご存知でしょうが、この花火や爆竹は生半可なものではありません。市街戦のような爆音と爆発光が夜半からそれこそ朝方まで続くのですから、近くに住んでいる者は堪りません。私はアパートの11階に住んでいましたが、中庭で花火を打ち上げるため、まさに部屋の真横で花火が爆発する格好となり、確かに綺麗でもありましたが恐怖も感じる花火だったのをよく覚えています。

A 民族大移動
春節は、地方出身の労働者(中でも「民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者)や学生が一斉に帰省する時期で、その数、実に2億人弱。まさに、民族大移動です。そのため、各交通機関は春節の前15日、後25日の40日間「春運」という特別輸送体制を敷きます。

特に利用者が多いのが鉄道・バスで、帰省客が殺到するためチケットの購入から乗車、さらには目的地までの旅行期間(例えば、上海から東北地方の黒竜江省までですと列車で約2日間かかります)、精神的にも肉体的にもかなり難儀なものらしいです。私はこの時期の列車に乗りはしませんでしたが、上海駅前まで出向いたことはあり、その際左の写真のような大きな袋を手にした大勢の帰省者を目の当たりにしました。

また、この時期、普段は全く運行していない航空便が飛びます。中国本土と台湾を結ぶ航空便です。実は、多くの台湾企業が本土に進出しており、駐在している台湾人は家族を含めれば100万人とも言われています。彼らの帰省や親戚を訪ねる人々のため、2005年から運行が開始されており、春節時期の新たな民族大移動の一面を形成しています。

政治の面では「反国家分裂法」が制定される一方でのこの措置は、中国の現実的な一面が垣間見られます。

B 中国版「紅白歌合戦」
昨年のトロント紅白歌合戦も大盛況だったと聞き及んでおりますが、中国にも「紅白歌合戦」と同じような番組があります。

香港の若手人気歌手や、ジャッキーチェンなども出演していたと思いますが、番組名や放送時間も定かには記憶しておりません。しかしながら、出演者が、各民族の代表であり多種多様であったことはよく覚えています。さすがに、60弱の民族からなる多民族国家だけあって、北方の満族・朝鮮族やモンゴル族、南方のヤオ族・ミャオ族、更には西方のチベット族等、少数民族の衣装・楽器・踊りが人海戦術で披露され、まさにお腹一杯状態になります。

中国は漢族が90%超を占めていますが、少数民族対策もこのような格好で実施しているのかとふと感じる番組でした。



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次号のリレー随筆は、マクマスター大学MBAプログラム教授、 好川透さんにお願いしました。



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