子供と補習校と私
卒業式−君が代が歌えない子、 そして小椋佳作曲の補習校校歌
在トロント日本国総領事館
笹尾 剛
先日、補習校の卒業式に列席してきた。昨年に続いて2回目の参加であるが、やはり卒業式というものは何度出てもいいものである。昨年は、補習校だからそれほど大げさなものでもないだろうと高を括っていたのだが、なかなかどうして、それはそれは大変立派で、ひょっとすると日本の卒業式よりも日本らしい卒業式かもしれない。そんな感動的な卒業式の中で私にとって興味深かったことを2点だけ書いてみたい。
まず1点目は国歌斉唱である。さすがここはカナダ、国歌斉唱もカナダ国歌である「O Canada」と日本国歌である「君が代」の両方を斉唱する。まずは「O Canada」から。伴奏に合わせて子どもたちの大きな歌声が体育館に響き渡る。どこの学校も同じだと思うが、現地校では、毎朝「O Canada」の斉唱又は静聴があるらしい。恥ずかしい話であるが、以前、子どもが忘れた弁当を届けようと現地校の廊下を歩いていたら、先生に「今は国歌が流れているから止まって聞きなさい」と注意されたことがある。そんな私のプチ思い出話自体はどうでもいいのだが、とにかく現地校に通っている子どもたちは毎朝「O Canada」を聞いているのである。
卒業式に話を戻すが、次に君が代斉唱。今度は大人の声しか聞こえず、子どもたちの歌声はほとんど聞こえない。「O Canada」と正反対である。ご多分に漏れず私も「O Canada」を歌うことはできないが、さすがに「君が代」なら歌える。しかし、口を動かしている子どもはほとんどいなかった。私自身は、子どもたちが「君が代」を歌えないことに軽い衝撃を受けたのであるが、考えてみれば当然と言えば当然である。日本の学校であれば、毎朝聞くことはないとしても、それなりに聞く機会は多いし、音楽の授業でも習った記憶がある。しかし、外国で、それも平日現地校に通っていれば、日本の国歌に接する機会は補習校の卒業式と入学式くらいしかないだろう。だからどうと言うことはないかもしれないが、少し考えさせられるものがあった。
2点目は校歌斉唱。トロント補習校には「トロント補習校の歌」という校歌(と言っていいのかどうかよく分からないが)がある。実はこの歌、作曲者が小椋佳氏である。あの有名な小椋氏がトロントに来て作ってくれた、と思ったがそうではないらしい。有名な話であるが小椋氏は元某都市銀行員である。ここトロントにもその銀行の支店があり、当該支店で働いていた方が小椋氏と旧知の仲とのことで、何かの折りにお願いしたところ、できあがったものが「トロント補習校の歌」とのことである。
ちなみに歌詞の方は当時の在校生が曲に合わせて付けたものだそうだ。聞いてみれば分かるが、いかにもあの小椋節であり、とても印象に残り覚えやすい曲である。聞いたことのない方は是非とも聞いてみていただきたい。本当にいい曲である。
卒業式で印象に残ったのがそれだけか、と怒られそうであるが、当然のことながら児童、生徒の別れの言葉、送辞などは、どれも感動的で心にぐっと来るものがあった。自分たちの体験や思いが自分たちの言葉で表現されており、だからこそ聞く者の胸を打つのである。また、佐野校長、伊東校長とも卒業生へのはなむけの言葉が大変素晴らしく、卒業生たちも心に残る経験になったのではないだろうか。素晴らしい式を作り上げられた先生方のご努力に心から感謝している。
|