カナダ医療体験談


その4 〜小話3部作〜
 困った体験その2 

「息子が指を大怪我、
救急の医師にすごいことを言われ・・・」



商工会事務局  伊東 義員


子供が小さいと本当に何が起こるかわからない。上の息子がまだ8歳くらいの頃、家の中で遊んでいた際に、壁から緩んで頭を出していた釘に、指を引っ掛けた。ちょうど動脈が走っていたところらしく、大量の出血。慌てた母親が職場に電話をよこした。急いで帰宅して見てみると、傷がかなり深そう。一応、止血処置はしてあったが、止まらず、どんどん出血している。「これは、大変!」と、すぐ近くにあった病院の救急窓口に駆け付けた。

受け付けを済ませ、かなり待たされた後、中国系らしい若い医師がその指の傷を診て、「傷がかなり深い。もしかしたら、神経が切れているかもしれない。その場合、この指が曲がらなくなるかもしれない」。傷を見ていたので、そんなこともあるかもとは思っていたが、改めて医師から言われると心配度百倍。その場で、まさに鈎針のような物を使って傷口を縫合してくれた。結果は、経過を見ないとわからないという。でも、とにかくやれやれ。

そうした治療が終わった後、その医師、しきりに息子の頭の形を見ている。暫く診た後、
「この子の頭の形は、生まれたときからか?頭痛はないか?知能は大丈夫か?成長に問題ないか?」
と質問し始めた。
「特に問題ない。成長も順調で、どちらかといえば大きいほうだ」
と答えると、
「この頭の形は、異型だ。これから脳の成長が妨げられる可能性がある。頭蓋骨を矯正する必要があるよ」
「え、頭蓋骨の矯正?そんなもの、どうやるんですか?」
「頭蓋骨がまだ成長期にある柔らかい内に、一度頭蓋骨を切って、矯正器具をいれ、頭蓋骨そのものの形を矯正し、脳の今後の成長に支障がでないようにします。やりますか」
「どんでもない。そんなこと、聞いたことがない。大体、この子の頭の形、確かに偏平ではあるが、まったく問題ないし、この程度の扁平はいくらでも見たことがある。やりません。頭蓋骨を切るなんて、とんでもない。」
と、その場で拒否して、帰宅した。

しかし、そうは言ってみたものの、かりにも医師が言うことなので、少し心配になり、ファミリードクターであるおばあちゃん先生に相談した。こんなこと言われたのですがというと、息子の頭の形を診て、
「大丈夫。問題ないよ。日本人の頭の形、こんなものよ。でも、心配であれば、専門医に診てもらったら」と専門の先生を紹介してくれた。

紹介された専門の先生にアポを取り、息子を連れて診察をしてもらった。その先生も中国人の先生でかなりのご年配。日本びいきらしく、にこにこしながら話を聞いてくれ、息子の頭をちょっと見ただけで、
「ははは、まったく問題ないね。この位で頭切ってたら、みんな切られちゃうよ」
一笑に付されてしまった。こちらとしては、すごく安心したが、同時に「こんな心配をさせたあの若い医師は、なんだったんだ!」と怒りが込み上げてきた。軽軽しく、こんな事言って欲しくない。どれだけこちらが心配するか、考えて欲しいものだ。

幸い、その後こんなことはないが、皆さんも、たとえ医師の言うことでも変だと思ったら、セカンドオピニオンは聞いたほうがよいですよ。ちなみに、きっかけとなった指の傷も、神経が切れていることもなく無事に治り、その息子は今、大学でトランペットを吹いている。

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