リレー随筆


心身で味わう健康法


Integrative Mental Health Centre of Toronto(統合メンタル・ヘルス・センター・オブ・トロント)
ナチュロパシック・ドクター 石井 真美(いしいまみ)


食欲の秋となりました。美味しいものが大好きな私にとって、それぞれの季節を楽しく味わう生活は、まさに嬉しく幸せなデリシャス・ライフ♪です。「味」には舌による神経感覚である風味のほか、「持ち味」、「味なことをする」、「味を覚える」など、そのものの持っている趣や良さ、洒落ていたり気の効いた趣味や風流心、一度経験したことによって得た面白さ、といった意味があります。

ですから、私にとって味わいあるものとは食べ物だけに限らず、音楽、芸術、家族や友人との時間はもちろん、学会発表や患者さんの笑顔だったり、と考えてみると数え切れないほどたくさん浮かんできます。心踊るリズム、心静まる色彩、心温まる優しさ、といった美しい感覚を、五感及び心眼を通して受け止め、共鳴し、そして味わう、ということは、まさに癒しや養生にもつながる健康法であるといえるでしょう。

有り難い事に、わたしはこの夏、禅の教えに基づいた瞑想トレーニングへ参加してきました。瞑想とはまさに、「今」というこの瞬間を全身全霊を持って味わう練習です。
じっくりとゆっくりと「今」にだけ生を噛み締めていると、だんだんと体が緩み、そして気持ちにゆとりが出てきます。体と心に一体感が生まれてくるのです。そうすると希望や喜びを見出す力が湧いてきて、辛かったり大変な状況においても何とか乗り越えられる強さと優しさを持ちえることができます。

忙しい日々の中、頭の中で会話が続いて集中できないこともあるかもしれません。そういう時もまず、基本の呼吸から整えます。ゆっくりと息を吐ききり、そして深く吸い込みます。深呼吸を数回続けるだけですでに安心感に包まれます。人体の素晴らしい自己治癒力ですね。

そして、「今」存在する自分自身を深く見つめ、そしてその声に耳を傾けます。
「なるほど。」
「そうだったんだね。」
それから、思いやりの言葉をかけます。
「ごめんね。」
「ありがとう。」

瞑想はどんなことをしていても実行可能です。もちろん本格的に座禅を組んでも良いし、歩いているときも、食べているときでもできます。私の最近のお気に入りは朝の歩行瞑想です。踏みしめる一歩一歩に「ただいま」と「おかえり」。オンタリオ湖の向こうに昇る朝日の暖かさを全身で感じ、ゆ~っくりと砂浜の上で歩を進めつつ、「今」この瞬間との一期一会を味わいます。母なる大地とつながりその愛に包まれ、まさに心洗われる一日のスタートです。


今日も皆様にとって味わい深い良き一日となりますように。
心より愛と希望と感謝の気持ちを込めて。



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