カナダで活躍する日本人紹介インタビュー


北米女子ホッケー最高峰リーグで活躍する日本女子
Canadian Women’s Hockey League(CWHL)、Toronto Furies
倉田知実選手
、鈴木世奈選手

北米女子ホッケーリーグの最高峰Canadian Women’s Hockey League(CWHL)のToronto Furiesに所属し、今期活躍された、倉田知実選手と鈴木世奈選手にお話を伺いました。

聞き手:的場広報部長(富士フィルムカナダ)

(的場)Toronto Furiesに入団された経緯を教えてください。

(鈴木)入団するためには、まずはドラフトで選んでもらい、その後トライアウトという適正検査のような試験に通らないといけません。海外の選手はカナダ国内ではあまり知られていないので、まず自分でチームのことを調べて、ドラフトにかかるように自己PRビデオや経歴を送りました。

(倉田)2015年の9月上旬にドラフトで選んでもらい、トライアウトの参加許可をもらいました。トライアウトでは、昨年度所属していた選手と一緒に普段の練習や練習試合をコーチ達に見てもらいます。特別スピード測定やスキルテストのようなものはなかったですね。期間は3週間くらいで、終了後、2、3週間経って、チームに入団するお話しを頂きました。

(的場)お二人はいつトロントに来られたんですか。

(倉田)私がトロントに来たのは8月初めです。先がどうなるか全く分からない状況でしたが、海外に出たいという気持ちと視野が広がって経験が増えればと思い、行動に移しました。良いように結果がついてきたので良かったです。

(鈴木)私は、トライアウトが始まる数日前の9月半ばにトロントに来ました。結果がどうなるか分からなかったので荷物は置いてきましたが、その後ロシアに遠征しているときにToronto Furiesから入団のお話をいただいたため、一旦荷物を取りに日本に帰りました。そしてトロントに10月中旬に戻ってきました。

(的場)トロントで生活をする上でご苦労もあったと思いますが、具体的にはどのようなことがありましたか。

(鈴木)家探しから苦労しましたが、ホームリンクから近いところを見つけられたので良かったです。ただ、私たちは車をもっていないので、防具を運ぶ時は重いので結構辛いですね。遠征に行く時なども各自現地まで行くことが多いので、遠い時は他の選手の車に乗せてもらったりしています。

(倉田)私はお財布を盗まれたり、携帯が壊れたりと、色々なトラブルに見舞われました。あとは、食事はやはり重要ですね。カナダの食事は美味しいとはいえ、遠征などに行くとカナダの食事が続くため、試合前はやっぱりお米が食べたいなっていつも思います(笑)。

あとはビザの問題です。私たちはビジタービザで来ているので、税関で止められたことが何度もあります。ビジタービザは連続で6ヶ月までしか滞在できないのですが、先日、試合の遠征でビジタービザ5ヶ月目にボストンに行ったときは、ビザを更新するために出国したのではないかと疑われました。

けれど、「ここのチームでホッケーやってます」という話をすると意外とすぐに通してくれます(笑)。鈴木選手は全日本の合宿などのため、頻繁に日本とカナダを往復しているのでより大変だと思います。

(的場)やはりホッケーをしていると、カナダでは通じやすいですか。

(鈴木)そうですね。「どこのポジションなの?」と聞かれたりして盛り上がります(笑)。日本ではなかなかないことなので、有り難いですね。

(的場)カナダの方々はホッケーが大好きですからね。お二人のように海外でプレイしたいという日本人選手は多いのでしょうか。

(鈴木)時代が変わってきて、今は個人の主張が尊重されてきています。以前は海外でプレイしたくても、環境や場所がなくて諦めていた選手がいた中、今はオリンピックなどで海外を経験し、もっと上を目指したいと実際に海外に行く選手が増えてきました。

私達みたいに個人で調べて行く選手もいますし、他国の選手に聞いてヨーロッパでプレイしている選手もいます。男子も海外で経験を積んでから日本に戻ってプレイするという選手が増えてきています。そのような選手が増え、日本でもっとホッケーが盛んになればいいなと思っています。

ただ、日本で強くなることも今は全然出来るので、海外に行けばいいというわけでもないんですよね。ホッケーだけのことを考えると日本でプレイしたいという選手も結構多いです。

(倉田)どう学んでどう身につけるかは人それぞれですね。ただ、今はインターネットのおかげで情報を入手することが簡単になり、選択肢が昔に比べると多くなりましたので、海外を経験したかった私達にとっては有り難い環境ですね。

(的場)数ある国の中から、どうしてカナダを選ばれたのですか。

(鈴木)私は日本代表としてソチオリンピックに出場した際に、結果がついてこなくて悔しい思いをして、海外に出たいという思いが強くなりました。ヨーロッパかカナダで悩んだのですが、本場のカナダを選びました。

理由としては、あと何年現役で出来るか分からないので、せっかくなら一番上のリーグで挑戦したかったのと、あと引退後のことを考えると英語を身につけたいと思ったからです。この間に、自分が引退後ホッケー以外でどういう方向に行きたいのかを見つめ直せればとも思ってます。

(倉田)私はもともとホッケーだけでなく、海外に興味がありました。大学卒業後、留学しようかなとも思ったのですが、いつまでも親の脛をかじれないので、とりあえず就職してホッケーをやりつつ留学資金を貯めました。お金が溜まったときに、母親が背中を押してくれました。

鈴木選手が言ったように、私もあと何年ホッケーが出来るか分からないので、行くなら今しかないと思いましたし、自分の中でどれだけできるのかチャレンジしてみたかったんです。ホッケーをしている者にとってカナダはすごい国なので、以前からカナダに行きたいとは思っていました。ホッケーが好きすぎてカナダを選んだ感じですね。

(的場)カナダに実際来てプレイをしてみて、日本とカナダのホッケーに違いは感じられますか。

(鈴木)一目瞭然だと思いますが、選手の体の強さは違いますね。また、ホッケー自体も日本と違います。カナダは個人の技術や、自分を見せるプレイスタイルですが、日本は体が小さく、力もカナダよりは劣っているため、チームプレイでカバーする戦術です。こちらでプレイして、逆に改めて日本のプレイの良さに気付いたこともあります。

(的場)日本を出たからこそ日本の良さに気付かれたんですね。チームには他に外国人選手はいるんですか。

(倉田)アメリカ人が一人います。その他は皆カナダ人です。カナダの遠方から来ている選手も多いです。


(的場)オフの日は何をしていらっしゃいますか。

(鈴木)チームの練習は基本的に水曜日と木曜日の夜で、試合は土日に行われます。その他の日はオフなので、各自がトレーニングや練習を行います。

チームメイトの多くは昼間仕事に行っていますが、私たちは現在仕事にも学校にも行っていないので、日中は二人もしくは各自で練習やトレーニング、またはホッケースクールで子供達にホッケーを教えるボランティアをしています。ホッケーを教えるのは楽しいですし、私達の勉強になることも多いですね。チームメイトと食事に行くこともあります。

(的場)トレーニングはどのようなことをするんですか。

(鈴木)各自違うのですが、私はウェイトトレーニングや走り込みなどをします。また、今チームカナダのナショナルチームの選手と一緒にスキル練習というのをさせてもらっていて、氷上の上でスキルに特化して練習したり、またはハンドリングを練習したりします。ダンベルを持ってベンチプレスやスクワットなどといった筋力トレーニングもやります。

(倉田)私は筋力トレーニングよりも氷上にいるのが好きなので、Shinnyに参加したり、キッズスクールで教えたりしてオフを過ごすことが多いです。また、英語の勉強をしたり、ボランティアでカナダ人に日本語を教えたりしています。週末は試合があるので、バタバタと毎日過ごしています。

(的場)あっという間に一週間が過ぎてしまいそうですね。

(倉田)試合数が日本では考えられないほど多いので、忙しいですし身体がキツイこともありますが、週に2回も試合があるというのは、選手としてはとても嬉しいです。そういう意味では本当に恵まれた環境ですね。

(鈴木)日本では、公式試合を3連休の3日間に1日2試合、という風に集中して行うため、次の大会まで1ヶ月、2ヶ月とスパンが空いてしまうので、次の大会のための練習をまた一から始めるといった感じです。しかしこちらでは、公式試合をほぼ毎週末2回行いますので、試合が終わったらすぐに翌週の試合のことを考えて、翌週の試合に向けた練習をします。

最終目標は、女子ホッケーのスタンレーカップである“クラークソンカップ”ですが、短いスパンで身近な目標に向けて練習を繰り返している今の状況は、私達の向上に繋がっていると思います。

(的場)私も先日マスターカードセンターに試合を観にいったんです。その日の試合は商工会で会員へ案内を出しまして、結構多くの日本人が観戦していたようですね。


(倉田選手)そうだったんですね!日本人の方がすごくたくさん観に来てくれているというのは気付きましたし、声をかけてくださった日本人の方もいました。マスターカードセンターではToronto Furiesの控え室が端の方にあるので分かりづらいのですが、選手達が退場する方に来てくれると、ハイタッチをしたりという触れ合いができます。

また、試合後に握手会やサイン会、写真撮影のようなものもやったりするんです。観に来てくださった時は、是非そちらの方にいらしてください!

(的場)次回は必ずそちらの方に行きますね。ホッケーの試合を間近で観たのは初めてだったのですが、想像以上に迫力があり、スピードにも圧倒されました。あんなに目まぐるしく選手の交代があるとは知らなかったんですが、長時間プレイするのはやはり大変なんですか。

(倉田)長時間は無理ですね。1シフトが約40秒間なんですが、自分の体力が全開の時に全力でプレイしますので、1分以上出ていたら足が追いつかなくなってしまいます。練習では走れなくなるまで走らされるのですが、本当に辛いです。本番はベストな状態でプレイすることが一番ですから。

(鈴木)20分間が3ピリオドありますので、最後まで持続できるように、また常にフレッシュな選手が出れるようにと考慮して、約40秒のシフトを大体4セットで回します。

(的場)選手の交代は指示が出ているんですか?それとも自分で交代するんですか?

(鈴木)状況と自分の判断です。交代の選手は決まっているので、私が入るとすぐに交代選手が出て行きます。ですが、若干早めに戻る選手っていますよね(笑)。あれ?もうちょっと出れるよね?って思うことがあります(笑)。

(倉田)その1人は私かもしれません(笑)。私は中間がなくて、持続するか切れるか、という感じなので、切れるときはさっと戻ります(笑)。でも私より早く戻る選手もいますし、年齢が上がるとやはり戻りが早いですね。

年齢が上の選手はやはり上手で、抜くところは抜いて、でもここさえ決めればというところで力を発揮してきます。自分のことをしっかり分かっていて、体力の使い方も調整しているんだなと思います。

(的場)年の功ということですね。それでは、2018年に平昌オリンピックが開催されますが、そちらの予選ももうすぐですか。

(鈴木)予選は前年の2017年に始まります。世界ランキングをもう少し伸ばすことができれば予選をパスできる可能性もなくはないので、今年の世界選手権でポイントを取っていきたいです。

トーナメント制なので一回の試合で決まってしまうため、照準を合わせて、身体のコンディションもメンタル面もしっかりと準備をしていかないといけません。ポイントを加算して上位チームに入り込み、日本が常にオリンピックに出られる国になることも目標の一つです。

(的場)期待していますので、頑張ってください!オリンピックと言えば、前回のソチオリンピックでのアメリカVSカナダの決勝は盛り上がりましたね。

(鈴木)直前までアメリカが勝っていたのに、ラスト1分くらいでカナダが得点し、その後オーバータイムでカナダが勝ったんですよね。

実は世界選手権ではアメリカが優勝することが多いのですが、カナダはオリンピックの年にしっかりと仕上げてきて、底力を見せるんです。過去4大会連続金メダルを取っているのはさすがだと思います。

日本でもカナダ人のコーチに教えてもらっていたんですが、ホッケー大国というプライドもあり、国を背負って来ているという意識がとても強く、負けたら国に帰れないという気持ちでプレイしていたそうです。プレッシャーもとても大きいそうですが、最後にはそれが力になったという風に聞きました。

チームメイトにもチームカナダとしてオリンピックに出ていたスプーナー選手がいますが、メンタルがとても強いです。そういう人達と一緒にプレイが出来ているということは、自分達のプラスになっていますね。

(的場)スプーナー選手は、先日の試合でプレイを見ましたが、さすがに体格も良く、スピードも速かったですね。

(鈴木選手)はい。彼女は大きくて上手くて、スピードもめちゃくちゃ速いですね。でもとても良い人なんですよ。

(倉田選手)そして見た目によらず意外と女子なんです。彼女のパジャマはピンクです(笑)。


(鈴木選手)日本でも結構そうなんですが、ホッケー選手って見た目はたくましいですが、意外としゃべったらすごく優しかったり、女子力が高い子が多いんですよ。お化粧やおしゃれが大好きだったり。

(的場)女性が集まる控え室は楽しそうですね。

(倉田選手)彼氏の話などの女子トークもしますよ。NHLの選手と付き合っている選手もいたりします。もちろん男っぽい子もいますが、こっちの選手は日本よりも女性っぽい子が多い気がしますね。会場にキャミソールとタイトスカートなどのセクシーな格好をしてきたりします。

(鈴木)日本では動き易くジーンズとスニーカーのようになってしまうことが多いですが、こちらでは試合前のドレスコードのようなものがあって、デニムはダメ、フードのついている服はダメ、など決まっているんです。

選手は皆、きちんとした服を着てヒールやブーツを履いて化粧もして会場に来ます。そうすることで、気持ちがしゃきっとすると言っていましたね。

(倉田)あと、メディアの目などもあるのだと思います。

(的場)裏話を伺えて面白いですね(笑)。それでは、ホッケー選手として、特別大事だと思うことは何でしょうか。

(鈴木)私はやはり日頃の練習が大事だと思います。氷上の練習やスキルも大事ですが、身体作り、基礎力作りをして受け皿を大きくするためにウェイトトレーニングなどに力を入れています。

あとは、土日にしっかりと準備ができた状態で試合に挑むため、オンとオフをしっかりと切り替えるようにしています。日本人の良いところだとも思いますが、日本では休みの日も常にホッケーのことを考えていた感じでした。しかしこちらに来てから、オンとオフの切り替えが上手なカナダの人達を見習いたいと、意識するようになりました。

コーチにも、ホッケーの時は集中してプレイしなさい、でもオフをしっかりと取って、ホッケー以外のことも楽しみなさい、と言われます。今までの習慣もあるのでまだ器用にできていないのですが、そうしたメリハリによって最高のパフォーマンスを出すべきところで出せるようになるのかなと思い、今取り組んでいます。

(的場)当社の社員を見ていても思いますが、カナダ人は休みを有効に活用するのが上手で、遊んでいるだけのように見えることもありますが、きちんと結果も残すんですよね。

(倉田)楽しみながらしているのが良い結果を生むのかもしれませんね。または、真面目に取り組んでいても表情が楽しそうだから、遊んでいるように見えてしまうのかもしれませんね。

私は、もちろん体力やスキルの向上も大事ですが、日本でアイスホッケーの人気がもっと高まって欲しいので、選手による広報活動も大事だと思っています。近年、女子ホッケーの日本代表チームをスマイルジャパンと銘打っていただいて、少しずつ注目をしていただいていますが、今後日本のホッケー競技人口が増えてもっと盛んになることを願っています。

(的場)それでは最後の質問になりますが、トロントにある日系コミュニティーに何か期待されることはありますか。

(倉田)せっかくカナダにいらっしゃるので、皆様もホッケーを始めてみたらいかがでしょうか。ホッケーは難しいと思われるようでしたら、スケートから始めていただいても良いかと思います。こちらは街中に無料で滑れるリンクがあって、スケート靴を始めとしたホッケーグッズもとても安く、始めるにはとても良い環境です。

こちらで日本人がみんなでスケート、できればホッケーをしてもらえて、いずれ何らかの形で日本のホッケーと繋がることができればいいなと思います。

また、選手として一番嬉しいのは、試合を観に来て応援してくれることです。特に、名前を書いたバーナーを持ってくれているととても力になります。日本ではホッケーを知っている方も少なく、まして生で観る機会はあまりないと思います。

反面カナダでは、試合を観る機会も多く、環境も整っています。私達の所属しているリーグもトップリーグではありますが、意外と気軽に観に来ていただけますし、Toronto Furriesのホームリンクであるマスターカードセンターは、TTCキップリング駅の南にあり、車でもTTCでも来て頂けます。

ですので、日本人の皆さんにももっとホッケー観戦をしてもらいたいです。そして面白いと思ってもらえたら、またいずれ日本に帰られたときに、日本でもホッケーの試合を観に来てもらえると嬉しいです。また今後、カナダでプレイをする日本人選手がきっともっと増えてくると思いますので、皆さんからの応援が、今後の選手の頑張りにも繋がると思います。

(鈴木)私は、トロントに在住されている方々ともっともっとコミュニケーションを取りたいと思っています。試合を観に来ていただけたら、是非声をかけてください。

また、倉田選手ともよく話しますが、私たちも応援してもらうだけではなく、還元していきたいという気持ちはあるのですが、何ができるのか、どういうふうに発信すれば良いのか分からず、活動できていません。

そんな中、子供たちにホッケーを教えるというのが私たちが持っているスキルを活かしてできることだと二人で考えて現在やっているのですが、是非他に何かあればお声掛けをいただきたいと思います。トロントには日本人学校があるということですので、そこに通う子供達にも何か私達ができることがあればと考えています。

私は大学でスポーツと健康について学んだのですが、大人の方もお仕事などで忙しく体を動かす機会が減っているというのが日本人の現状です。運動不足の解消に、できればホッケーを一緒にやるというのが一番ですが、ホッケーやスケート以外でも、一緒に体を動かす機会を設けることができれば良いなと思っています。

(倉田)私たちにとって、このような取材の機会をいただけたことも本当に有り難いことだと感謝しています。こうしたことを通じて日系コミュニティの皆様と繋がることができれば嬉しいです。

(的場)商工会でも20年ほど前に親子スケート大会というのがあったんです。また商工会は、トロント補習校の運営サポートもしておりますので、いずれ一緒に何かできれば良いですね。本日は、どうも有難うございました。来シーズンもお二人がトロントに戻って来られることを待ち望んでいます。




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