「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー



<第173回>
The Japan Foundation, Toronto/
独立行政法人国際交流基金トロント日本文化センター
清水 優子/ Executive Director


今回の代表者インタビューは、日本と諸外国の国際交流を推進する独立行政法人、国際交流基金日本トロント日本文化センターの清水優子所長にお話を伺って参りました。

約2年前にオフィスを移転され、現在はBloor-Yonge 駅直結ビルの3階にあります。日本語の書籍のある図書館や日本映画の上映、文化の紹介など私たちの生活の中にも深い関わり合いを持っています。インタビューでは、実際の業務内容からドイツで育ったご経歴まで色々とお話し頂きました。


(平林)貴センターの事業内容をお願いいたします。

(清水氏)国際交流基金トロント日本文化センターの母体は、外務省所管の独立行政法人で、国際文化交流を専門に行う唯一の機関です。「日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむ」ことをミッションとして、「文化・芸術」「日本語教育」「日本研究・知的交流」という、大きくわけて三つの分野で事業を行っております。

現在、世界中23カ国に24拠点がごさいまして、トロントはカナダで唯一の事務所となっております。事務所は1990年に設立し1995年から文化センターとして活動しています。

トロントを拠点に、図書館事業、講演会、映画上映や日本語講座など多岐にわたって実施しておりますが、役割としてはカナダ全体の日本文化関連事業を担っておりますので、カナダ各地の文化施設や日本語教育機関、大学等での日本研究や会議開催への支援なども幅広く行っております。

オフィスのスタッフは14名ですが、約100名のボランティアに各イベントに協力して頂いています。


(平林)文化センターの事業の活動状況など教えていただけますか。

(清水氏)定期的にイベントを行っており、講演会や映画上映、展覧会などの各事業が有機的な繋がりをもつように、なるべく関連するテーマでご紹介させて頂いています。

例えば現在開催中の「石岡瑛子ポスター展」では、石岡氏がグラフィックデザイナーとして制作したポスターを約70点展示し、衣装デザインを担当した映画を紹介するとともに、日本のグラフィックデザインの変遷に関する講演会を開催して、利用者の方により興味を持って頂けるような工夫をしています。

現在、催しや図書館の年間利用者数は約2万人程で、昨年比で20%位伸びております。事務所移転後2年が経ち、以前の利用者が徐々に戻ってきたこともありますが、SNS等を利用した広報に力を入れたりトロント市内で行われているフェスティバルやイベントと連携することで、足を運んでくださる方が増えてきているのだと思います。

(平林)日本語教育の部分はいかがでしょうか。

(清水氏)国際交流基金が3年毎に行っている日本語教育機関調査によりますと、カナダ国内で日本語を勉強している方は2万人近くいるという統計の数字が出ていますが、実際には日本語能力試験の受験者数は伸びていますので、どこの機関にも所属せずにインターネットなどを使って、独学で勉強する人が増えていると考えています。

また日本のアニメなどポップカルチャーの人気の影響もあり、大学等での日本語講座の需要は高まっておりまして、実際に先生や講座が足りないという話も聞いております。そういったニーズを意識して、オンライン日本語教師研修や日本語教育入門研修を今年開講いたしました。

(平林)23カ国に拠点を持たれていますが、カナダは他の国と何か異なる部分はありますか。

(清水氏)カナダは国土が広く、効果的に文化事業を行うためには、5都市に点在している在外公館をはじめとする各地の文化施設や日系文化会館、日加友好団体などと連携することが大切だと考えています。

また、多文化社会のこの国には多くの民族、国籍の方がいらっしゃいます。運営するにあたりその利点を活かしながら日本を紹介し、各国の文化団体とも協力して事業を行っていきたいと思っております。

(平林)今後何か考えていらっしゃるプロジェクトなどはありますか。

(清水氏)来年は日加修好90周年にあたりますし、2020年の東京オリンピックに向けて、日本への関心を高めてゆく良い機会だと思います。その追い風の中で、今後もインパクトの強いイベントや活動を展開していければと思っております。

実際に今、著名な太鼓奏者の方のツアーですとか、展覧会や映画特集なども企画しており、これからも来年以降に向けて増やしていきたいと考えております。


(平林)今後力を入れていきたいことはありますか。

(清水氏)若い人にアピールできることをやっていきたいと思います。青少年の関心に沿った内容の企画を通じて日本への理解を深めてもらい、またウェブなどをさらに活用しながら情報提供をしていきアクセスしやすい状況を作ることで、より日本について興味を持って頂けるようにしたいと思います。

(平林)プライベートについてもお伺いしたいと思いますが、まずはご経歴についてお願します。

(清水氏)横浜生まれですが、2歳の時に父が海外へ転勤になり、ドイツとスイスの小学校に通いました。中学時代は日本で過ごしましたが、高校は再びドイツに戻りまして、日本の大学を卒業後、国際交流基金に就職しました。

幼少期から海外で育ったということもあり、日本文化への憧れから日本の文化を紹介し、日本と諸外国のかけ橋になるような仕事をすることに興味がありました。調べた結果、国際交流基金がまさに希望に当てはまり、念願叶って就職することになりました。

就職後は日本語教材の開発部署や総務課を経験後、20代の終わりから7年間ドイツのケルンにある日本文化会館に初めて海外赴任しました。帰国後は横浜トリエンナーレという現代アートの国際展の運営に関わり、理事長の補佐、日米センターを経てトロントへ赴任となりました。

(平林)ドイツ、カナダで生活されてみて何か違いなど感じることはありますか。

(清水氏)暮らしやすさの面ではドイツとカナダはあまり変わらないと思いますが、多民族が共生している環境のおかげか、カナダには心地よい緩さのようなものを感じます。

最初はその緩さが気になってしまったのですが、それは相手に対する寛容性だったという気づきを得て、今は前向きに捉えるようにしています。

(平林)何かお仕事の中で印象に残っているプロジェクトなどありますか。

(清水氏)仕事上、著名な作家や芸術家、映画監督などの文化人とお会いし、よい刺激をいただく機会が多々ありました。しかし結局のところ国際交流の仕事は、実はとても地味な側面がありまして、言葉のみならず文化の背景を理解した上で、日々の業務の中で人と人を繋いだり、各団体の間に入って調整をすることが大切です。

例えばドイツに赴任していた時に、重要文化財級の作品を展示する展覧会の企画に携わりまして、現地とは全く違うシステムや考え方を持つ日本の美術館関係者や各省庁の意思を現場に翻訳して伝えることは大変難しい業務でしたが、やりがいがあったと思います。

(平林)仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(清水氏)「文化交流は、人に始まり人に終わる」と言われているのですが、やはり人との出会いを一番大切にしたいと思っています。仕事関係者に限らず、出会う方には丁寧に接してそのコネクションを大事にしたいです。またトロント事務所のスタッフと日本の本部との情報共有、風通しの良さというのも大切しているつもりです。

(平林)幼少の頃から日本、海外と暮らして何かご苦労などありましたか。

(清水氏)家庭では日本語以外を使うことが許されず、現地校に加えて補習校や通信教育なども行っていましたが、そのおかげで中学でいきなり日本に帰った時も、まったく不自由なく授業についていくことができました。この点は両親にとても感謝しております。

(平林)現在はお仕事や育児でお忙しい毎日をお送りかと思いますが、カナダに来て感じることや、バランス良く生活される秘訣などありますか。


(清水氏)小学校一年生の息子がおりますが、カナダに来ておおらかにゆったりと育っているなと思います。主人が一旦仕事を辞めて一緒に来てくれましたので、家事の部分では主人の協力を得ながら、甘えられることは甘えさせてもらっています。

また、息子にとっても父親とゆっくりと時間を共有することができることは、とても貴重な体験だと思います。そして家族に対しては、日々感謝の気持ちを忘れないように心がけています。

(平林)今後カナダにいる間にやってみたいことはありますか。

(清水氏)家族で旅行するのが好きですので、カナダの大自然を訪れ、先住民文化の体験ツアーに参加したり、オーロラを見に行ったりなども出来たらいいなと思います。また、息子が4歳の時に一緒に習い始めた中国の楽器、二胡もそろそろ再開したいと思っております。

(平林)最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いいたします。

(清水氏)こちらは政府機関ですので、経済関連の方との接点がなかなかありませんが、もしこちらで日本の文化情報の関連や機関のコネクションなどでお役に立てることがありましたら、遠慮なくいつでもご相談ください。催し物や図書館などにも、是非ご家族で気軽に足をお運び頂けたら嬉しいです。

(平林)インタビューは以上となります。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。




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