カナダで活躍する若手日本人に聞く


トロントで活躍する若手日本人にインタビュー
Sora Studio Minami (鈴木 美波) さん



いま日本全国にスタジオが増え注目されている、ニューヨーク発のハンモックを使って行う空中ヨガ。日本とカナダのバレエ団で国際的に活躍し、長年ダンスやヨガの指導を続ける鈴木美波さんは、東京から単身カナダへ渡り、2016年にトロント初のハンモックヨガスタジオ、Sora Studioをオープンしました。


(三藤)日本では空中ヨガ、ハンモックヨガなどと呼ばれ「重量から解放されてヨガのポーズを行う」といったように雑誌などでも取り上げられているのを目にしますが、これは新しいものですか?実際にどんなことをするのか教えてください。

(鈴木氏)ハンモックを使って行なうフィットネスクラスとして2007年にニューヨークで生まれたものです。まだ新しいですね。正式にはアンティグラビティ(AntiGravity® )フィットネス&ヨガ、と言います。

ハンモックに身をまかせることで背骨や関節に負担をかけずに運動できるのが特徴です。専用ハンモックは、シルクドソレイユのステージでも使われているものと同じ素材なんです。日本に上陸したのは2014年、私も日本での立ち上げメンバーとして仕事をさせていただきました。


(三藤)写真やビデオを見ると、なんだかすごいアクロバットのように見えますが、体が硬い人や、フィットしていない一般の人でもできるものですか?

(鈴木氏)できます。アメリカなどでは、健康のためにエクササイズをしなくてはいけないけれど、体が大きくて関節に負担がかかるのでぴったりの運動なかなか見つけられなかったり続けられない人がけっこういますが、ハンモックに体重をのせることで、負担が少なく体を動かすことができるんです。80歳になってされている人もいます。

運動選手がメンテナンスやエクササイズに使う場合もあります。たとえばテニスのジョコヴィッチ選手は、メンテナンスのためにアンティグラビティをやっているそうです。逆さまになって腰を伸ばしたりするんですね。


(三藤)鈴木さんは、東京出身のプロのバレエダンサーで、十代のうちから主役に抜擢されたり、受賞歴もあり国内外で活躍されていたわけですが、トロントにいらっしゃってヨガスタジオを開くまでのいきさつを聞かせてください。

(鈴木氏)トロントに住むのは、実は今回が二度目なんです。

バレエは小さい頃に日本で始めました。踊ることが大好きで、子どもの頃から自分の意志でプロを目指していました。スイスのローザンヌ国際バレエコンクールに出場したり、国内コンクールで受賞したこともあります。

高校を卒業して日本のスターダンサーズバレエ団に入団、17才からいろいろな役をやらせてもらい、ピーターライト版「くるみ割り人形」や「コッペリア」の主役を演じたりしました。

10年前、海外でチャレンジしようと決め、カナダやヨーロッパのバレエ団のオーディションを受け、トロントのバレエ団に採用されました。最初のトロント生活はその時です。なので今回はトロントに帰ってきたという感じです。


(三藤)バレエ団の仕事を終えた後、東京に戻られたんですね。ヨガはそれから始めたんですか?

(鈴木氏)帰国後も舞台に出たり、ダンスを教えたりしていましたが、バレエダンサーも寿命のある仕事なので引退したときに何がしたいか考えて、トロントで出会ったヨガが好きだったので、もっと勉強しようと思いました。

ヨガの世界観、哲学に魅かれました。そして、ヨガの世界に足を踏み入れ、ダンサーとして活動を続けながら、ヨガも教えるようになりました。


(三藤)ハンモックヨガ、アンティグラビティとの出会いについてお聞かせください。

(鈴木氏)3年半ぐらい前に、知り合いを通し、ハンモックを使ったヨガを日本に持ってきたい、立ち上げを手伝ってくれないかと声をかけていただきました。ちょうど新しいこともやってみたいと考えていたし、立ち上げっておもしろそうだなと思い、そのオーナーの方もとても魅力的な方だったので、「あ、やります!」と。

インストラクターの資格を取り教えはじめたのですが、立ち上げチームの中で英語が話せるのがたまたま私だけだったので、ニューヨークの本部と東京をつなげるという役目を任せていただくことに。


(三藤)日本でのブーム仕掛け人のおひとりだったんですね。

(鈴木氏)3年間、ずいぶん深ところまで携わりました。最初の一年間は一カ所だったスタジオが、現在では60カ所以上にまで増え、インストラクターも最初の6人から現在は350人以上になりました。日本にもコミュニティができてきましたね。


(三藤)東京では、チャレンジ精神いっぱいで、充実した生活をされていたんですね。先ほどバレエダンサーも寿命がある職業というお話が出ましたが、プロのバレエダンサーは若いうちから引退後の人生を計画するものですか?

(鈴木氏)バレエダンサーは20代前半はがむしゃらにやって、女性だと20代後半は結婚や出産を考えたり、30才近くなってくると、これは男性もそうですが、いま怪我をしたらまた戻ってこれるのかな、など考え始めますね。

日本では、ダンサーは芸術家というより趣味の延長と思われがちで、カナダやヨーロッパのようにバレエ団引退後のダンサーをサポートするシステムがないんです。

カナダでは、例えばナショナルバレエなどで踊っていた人は、引退後、他のキャリアへ転向できるよう補助金システムがあります。例えば、お医者さんになりたい、学校の教師になりたいなど違う分野でもやっていけるよう学校へ通うためのサポートです。ヨーロッパでは、一般より早く年金がもらえたりします。

日本だと引退したらほとんどバレエを教える仕事しかないですね。世界トップレベルまでいったダンサーなら、バレエ団の監督、バレエマスターのようなポジションにつけますが、それは限られています。

そんな中、もっと色々な世界を見たかった私にとっては、ヨガやアンティグラビティに出会えたのは、本当によかったです。


(三藤)再びトロントに来ようと思ったのはなぜですか。

(鈴木氏)日本帰国後の生活も忙しく充実しており、東京は自分の故郷でもあるし、不満があるわけでもなかったのですが、海外に住んで人生もっといろいろ経験したいという思いはありました。

海外に出てもやはり自分の武器であるのは踊りとヨガ、そしてハンモックヨガです。それをするチャンスのあるところ。ドイツも考えましたが、以前住んでいたトロントが好きだったし、英語圏なら言葉の壁もないのでスタートしやすいだろうというのもありました。

アンティグラビティフィットネスのスタジオは世界60カ国に展開していて、オタワやバンクーバー、サスカチュワンにもあるのに、調べてみるとなぜかニューヨークに一番近いトロントにはひとつもなかったんです。

これはもうトロント開拓は私がやるしかない!と。それではじめからSora Studio を立ち上げるつもりで来ました。日本にいる間に少しづつ準備をはじめ、トロントの知り合いに連絡を取って相談したり色々話し合いもしました。

実は当初の計画ではあと何年かしてから来ようと思っていたのですが、いろいろなタイミングで一年半ほど前に引っ越してきました。

今のスタジオは、元々知り合いでもあったダンサーの方が所有しているもので、そのスタジオを使ってもいいよと言ってくださったり、日本の仕事や家族のことなど、すべてが背中を押してくれるような条件が揃ってしまったので、これは今しかない、と。


(三藤)背中を押されて決心し、結果的に良かったですか?スタジオの運営についてや、苦労話などもあればお聞かせください。

(鈴木氏)タイミングや直感を信じることは大切だと思っています。今回もスタジオは、いろいろな人のサポートを得て、動き出しました。ホームページとチラシは、アンティグラビティフィットネスの同僚が作ってくれました。

そして、昨年9月にインストラクターの資格を取りたいという日本の女性が現れて…彼女との出会いも奇跡です。今いろいろサポートしてもらっていますが、彼女がいなかったらできなかったことがたくさんあります。

現在、日本人の方がたくさんクラスに来てくださっていますが、私が仕事で一時帰国したいときなど彼女が指導を担当してくれたりと、本当にありがたいです。

苦労したことは…そうですね、トロントの様子はだいたい前に住んで分かっていたのですが、実際ビジネスをしてみると知らない事だらけで。一人で会社を立ち上げる方法、税金についてさえ、最初は何をどこで調べたらいいのかもわかりませんでした。

何が分からないのかも分からなかったんです(笑)。今はこうしなきゃいけない、どんな準備が必要なのか等、いろんな人に聞いて教えてもらい、だんだんつかめてきました。

それから、やっぱりカナダ人のペースがですね…イージーゴーイングで、のんきなところが(笑)。当初、スタジオをしっかりブッキングしておいたのに、いつの間にか他のイベントでキャンセルされてしまっていたり、ドタキャンなどもありました。

「そういうのはアンプロフェッショナルで困ります!」ってはっきりと文句を言っているうちに、怖いと思われはじめたのか(笑)、最近はきちんとしてくれるようになりました。


(三藤)これからの目標は何でしょうか。

(鈴木氏)いま日本人の生徒さんがたくさん来てくれていますが、これから更に地元のカナダ人にも、もっとアンティグラビティについて知ってもらい、色々な人が来てくれる教室にしていきたいです。そして、いつか日本のようにコミュニティができるぐらいに。

自分の専用スタジオを持つのが目標です。まだ先かもしれませんが、もうデザインも頭の中にあるんです。日本のサービスの気持ちや、おもてなしの心のあるスタジオにしたい。そして、生徒さんが家族の一員のようになり、スタジオを「居場所」と感じてもらえるようにしたいですね。人と人をつなげるツールになるといいなと思っています。

強い思いと努力があれば結果になって出てくると信じています。バレエで小学校の頃から、ベストをつくす、ということが身についているので、達成できるよう走り続けます。いろいろアップダウンはある人生ですが、もう明日死んでもいいやっていうぐらい、毎日を後悔しないで生きたいなと思っています。


(三藤)最後に『とりりあむ』読者の皆さんへ何かメッセージがあればお願いします。

(鈴木氏)フィットネスやヨガは年齢関係なくいつでもスタートできます。特にデスクワークの多い方には、腰痛予防・改善にアンティグラビティフィットネスをお勧めします。男性でも女性でも体に良く、リフレッシュになりますので、ぜひ一度スタジオにいらっしゃってください。逆さまになることにハマる方も結構いらっしゃいますよ(笑)。


(三藤)本日はありがとうございました。鈴木さんの専用スタジオがトロントにオープンする日を楽しみにしています。



戻る